失った恋にさ迷って ~松任谷由実の『届かないセレナーデ』

どんなに尽くしても、一所懸命に「いい女」であろうとしても、恋というのは失う時には失うし、愛されないものはどうしようもない。

それこそ彼氏に何遍手をついて、「私のこと、好きになってください」とお願いしても、一度醒めた人の心は1ミリだって動かいものだ。

でも、若い女の子は無知だから、全部「私のせい」と思う。

謝れば、もう一度、私に振り向いてくれる。

彼の心が醒めたのではなく、私の接し方が悪いのだ、etc。

そうして、しつこく、しつこく彼氏の後を追いかけて、もっと傷ついてしまう。

どこかで悟って止めればいいのに、諦めきれない。

彼と出会えそうな場所、出会えそうな時間帯に、ついふらふらと出かけてしまう。

ならないケータイを握りしめて──。

*

恋というのは、終わる時には終わるもの。

それを受け入れられないのは、女の子に魅力がないからではなく、人の心やこの世の物事にまだまだ無知だから。

いい年したオバサンにもなれば、「そういう時もあるさ」と腹を括って開き直る図太さもあるけれど、10代、20代の若い女の子には、あれほど自分を好きだと言ってくれた男の気持ちが180度変わるなど、絶対に理解できないだろう。

頭では薄々分かっていても、認めたくないし、受け入れたくもない。

そんなこと認めたら、「アナタには女の子としての魅力はありません」「アナタは誰にも愛されない、ミジメな女の子なのよ」って永遠に言われそうな気がして。

それは寝ても覚めても恋愛一色で、彼氏にドバっと自分を懸けてしまう女の子にとって、生命線を絶たれるのも同じこと。

彼女たちは、まだまだこれから先も生きて行かないといけない。

なのに、人生の出鼻で「お前、ダメだな」と言われたら、いったい何を心の支えに未来に向かって行けばいいのか。

ただでさえ無知で、無力で、世の中のどうしようもなさが理解できないお年頃、それは酸いも甘いもかみ分けた大人には想像もできなくらい衝撃的な出来事だったりする。

だから、周囲の人間は『失恋』ってものを甘く見てはいけないし、女の子自身もそれですべてを判断しちゃいけない。

また必要以上に自分を責めてもいけない。

いつか「分かるようになる」その日まで、自分が抱えている痛みとか淋しさとか悔しさを、一つの心の体験として持っておくことだ。

慌てて元気になろう、強くなろうとしても、かえってトラウマになって残る。

それよりユーミンでも聴いて、しばらく、どっぷり失恋の世界に浸ってみよう。

世の中にはそういうバカな女の子の気持ちも理解してくれる人がいるってことが分かるし、あなた一人が恋に傷ついているわけでもないと思える。

失恋の特効薬は、「失恋も人生の意義ある体験の一つ」と思えるようになること。

無意味な反省会や彼氏の心を取り戻すための策略に時間を費やすよりはね、多分、もっと前向きになれると思うよ。

*

LOVE WARS』に収録された『届かないセレナーデ』は、失恋した彼のことが忘れられず、夜の都会をさまよい歩く女の子の気持ちがせつなく謳われている。

もう会えない、会ってはいけないと分かっていても、大好きな彼の面影を追って出かけてしまう気持ち。

すれ違う人、遠くに見える人、もしかしたらあの人? と期待に目をこらしても、会えるわけがない。

そう分かっていても、ここに居れば、もう一度、やり直せるような気がして、ぐるぐる同じ場所を廻り続ける。

ごめんなさい 人違いです
逃げるようにして渡る 信号

いつまでも断ち切れぬ想い。

何処にも突き抜ける先がない。

だから今もこの場所に、抜け殻みたいに立ち尽くしす。戻ることも、進むことも、出来ぬまま──。

あなたと暮らした町で 今年も暮れて行くわ

☆冒頭に十数秒、宣伝が入ります。ロシアの動画サイトより。セキュリティソフトを入れてない端末で視聴する場合は自己責任でお願いします。

松任谷由実 (Yumi Matsutôya) – 届かないセレナーデ (Todokanai serenade) от Sonate64 на Rutube.

こういう痛みも、いつか、みんな、思い出に変わる。

思い出になった時には、「こういうことを経験してよかったのだ」と心の底から思えるようになる。

永遠に失恋している人などない。

失恋は、死に神の宣告ではなく、経験の一つに過ぎないのだ。

CD

『LOVE WARS』って、昭和バブル期の『純愛ブーム』の走りだったんですよね。

クリスマスに高級ホテルでディナーしたり、アッシーメッシーを何人も抱えたり、ティファニーのネックレスをおねだりしたり。

そういう物質的な恋愛にNoを突きつけるのが純愛ブームでした。

ある意味、物質的な恋愛ができる時代は幸福なんですよ。

10代20代の子でもちょっと頑張ったらティファニーのネックレスやカルチェの三連リングが買える方が夢と勢いがあっていいでしょうに。

LOVE WARS
by (CD)
定価  ¥ 2,379
中古 34点 & 新品  ¥ 932 から
5つ星のうち 3.7  (15 件のカスタマーレビュー)

QUOTE CARD

  • どんな高邁な理想も、言葉だけでは人は動かせない。 身をもって示して初めて、理想が理想としての意味をもつ。 その後、彼は死ぬまで父を忘れず、その生き様を指針にするわけだが、愛とは何かと問われたら、慈しむだけが全てではない。身をもって生き様を示す勇気も至上のものだろう。 誰でも犠牲は怖い。  自分だけ馬鹿正直をして、損したくない気持ちは皆同じだ。  だが、その結果、一番側で見ている子供はどうなるか、いわずもがなだろう。  言行の伴わない親を持つほど不幸なことはない。  たとえ現世で馬鹿正直と言われても、本物の勇気、本物の優しさ、本物の気高さを間近に見ることができた子供は幸いである。 どんな高邁な理想も、言葉だけでは人は動かせない。 身をもって示して初めて、理想が理想としての意味をもつ。...
  • 「創造的」というのは詩を書いたり、絵を描いたり、という意味ではありません。無の平原から意味のある何かを立ち上げることです。 より良く生きる為に、日々、考えること、実行すること、その全てが『創造』です。 どんなに小さくても、昨日よりは今日、今日よりは明日、少しずつでも歩みを進め、善きものを積み上げることを「創造的な生き方」と言います。 「創造的」というのは詩を書いたり、絵を描いたり、という意味ではありません。無の平原から意味のある何かを立ち上げることです。 より良く生きる為に、日々、考えること、実行すること、その全てが『創造』です。...
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この記事を書いた人

石田 朋子

文芸愛好家&サブカルチャー・ファン。主に70年代~90年代の作品に思い入れがあります。寺山修司の名言『詩を作るより、田を作れ(揶揄)』をモットーに、好きな作品を次代に伝えることを目標にしています。海外在住につき、現代日本とは相容れない所がありますがご容赦ください。
※ 現在、制作巣ごもり中につき、ほとんど更新していません。