革命家はね、わき目をふっちゃいけないんだ

実を言うと、あんまり姉さんと灰男さんと仲良くなってほしくないんだ。
夏美
なあんだ、妬いてるの?
そんあんじゃないさ、ただぼくらが仕事していくには、まわりのものに目をくれていちゃいけないんだ。革命家はね、お姉さん、道端にひなげしの花が咲いてもそれにわき目をふっちゃいけないんだ。
夏美
(喜んで)あたし、ひなげしなのね。
「ひなげしを摘まないで」だ。
夏美
でも、どうして?
ひなげしを摘める日のための「お仕事」じゃなかったの? 良たちのは。
もの事には順序があるんだ。
夏美
花よりさきに実のつく草もあるわ。

戯曲 毛皮のマリー・血は立ったまま眠っている (角川文庫)

人は、しばしば一つの思想に囚われ、わき目もふらぬことがある。

自由や平和の為に始めた運動が、いつしか「自身の思想を叶える為の手段」になっていく。

上記に喩えれば、『ひなげし』の為に始めた運動が、いつしか己の思想の正当性を証明する事が目的になるような場合だ。

そうなると、『ひなげし』は口実で、運動の是非が重要になる。

それは万人の為に見えて、その実、自分が正しいか否かのアピールに過ぎない。

『ひなげし』の為に始めた運動が正しければ、その恵みはいつか『ひなげし』に還元されるのだろう。

だが、その為に、わき目もふらず、省みもせず、邁進することが、果たして社会全体の益となるのか。

革命家が往々にして失敗するのは、最後には自己の正当性に固執するからではないだろうか。

Morgenrood 曙光

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この記事を書いた人

石田 朋子

文芸愛好家&サブカルチャー・ファン。主に70年代~90年代の作品に思い入れがあります。寺山修司の名言『詩を作るより、田を作れ(揶揄)』をモットーに、好きな作品を次代に伝えることを目標にしています。海外在住につき、現代日本とは相容れない所がありますがご容赦ください。趣味はドライブと登山。