技術の真価は、それを持つ人間の思想に支配されている

『L(エル)』の序文

ヘブライ語で EL と書けば、「至高者=神」表わします。

だけど、私にとって『L

すなわちエルは、

LORD = 主、道、指導者

LIFE = 生命、人生、生活

LOVE = 愛の象徴

です。

三つのL(エル)

LORD

人間は迷いやすく、かつ悪に染まりやすい生き物です。
なぜなら、この世では正義を行うより、間違いを犯す方が簡単だからです。
人間はエデンの園に守られた「神の知の実」を取って食べた時から(キリスト教でいう“原罪”ですね)、己の声(=内なる欲望)に従って行動するようになりました。

しかし、人間は常に誘惑や欲望に打ち勝ち、常に正しい道を選択できるほど強くはありません。迷いもすれば、過ちもする。
時には我欲にとらわれ、人を傷付けもします。

そんな人間が己の声にのみ従い、己にだけ規律を求めて行動すればどうなるでしょうか。

誰もが「個」という自由を正しく扱い、社会の秩序を保ち続けることができるでしょうか。

私は「個」も「社会」も瓦解すると思います。

人間が、社会が、秩序の中で存続するには、LORDとなる理念や理想、それを体現する人間が必要なのです。

LORDの無い人間も社会も、軌道を無くした惑星と同じです。
善と悪との境が無くなり、行くべき道を無くした星は闇を迷走し、光あるところには向かいません。
LORDを無くした世界はいずれ足元から崩れ落ちるでしょう。

昔から、道を示すのは「父親」の役割でした。
キリスト教で「神」が「Father」と呼ばれる所以です。

でも今は「父権喪失」の時代といわれるように、家庭にも社会にも、個々の中にも、父親的な役割を果たすものが欠落しています。

だから皆が何処へ向かえば良いか分からないし、一切が混沌として、先の見えない不安感にすっぽり包まれているのではないでしょうか。

また、社会全体の「迷い」「喪失」「虚無感」は、個々の中にも深く根を下ろし、一人一人の価値ある生をも虚ろなものにしています。

ニーチェはこうした状態を『神は死んだ』という言葉で表しました。

「神」すなわち、「超越的真理」が人間を導く力を無くした為に、「個」も「社会」もその存在の拠り所となるものを失い、「一切は無意味」という虚無感に陥ったのだと。

そこで彼は、その虚無感をいかに克服し、無の大地から生を築き上げていくか、ということを説きました。

人間は存在するからには意味が欲しい。

生きていくには目標が必要です。

しかし全ての人がそれを見出せるわけではありません。

中には、自分が何ものであるかも知らずに一生を終えてしまう人もいます。

自分の存在理由を見出せぬまま、無為に生き続けるほど空しいものはありません。

そういう人間に道を示し、光を照らすのが、LORD=「父親なるもの」の役割ではないでしょうか。両親しかり、教師しかり、組織の長しかり……。

人は常に答えを求めています。

LORDが無ければ、「個」は迷い、やがて社会全体が瓦解するでしょう。

もっとも大切なことは方向を与えることである」とニーチェはいいました。

生のベクトルを何処に向けるか――LORDはそれについて一つの答えを持っているのです。

LOVE

愛は、この世を支配する法則とは別のものです。
愛は、愛するものの為に自分の不利益をも選ばせる力をもちます。(梶原一騎の『愛と誠』より)

愛は、与えるほどに与えられる、尽きることなき心の泉。

愛きわまれば死に至る――魔薬のようなもの。

LIFE

LOVEから生まれ、LOVEに支えられるのがLIFEです。

人間が生きていく上で一番大切なこと、それは自分が望まれてこの世に生きていると確信することです。(マザー・テレサの言葉)

初稿:1999年1月13日

【楽園追放 】~ The Fall from Grace ~ ミケランジェロ・ブオナローティ Michelangelo Buonaroti
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