シュリ

韓国映画『シュリ』 南北首脳会談に寄せて~自由に行き来する魚のように

2018年 南北首脳会談に寄せて

どこの世界も隣国同士は仲の悪いものだ。武力抗争とまではいかなくても、サッカーで代理戦争を楽しんだり、ブラックジョークで相手国を揶揄したり、飲み屋に行けば「○○国の歯医者はどうたら」、日常レベルのワルグチはいくらでも聞く。まして政治的・歴史的に敵対関係にあるなら、尚更だろう。

グローバル化も進み、もうすっかり「世界は平和。人類みな兄弟」みたいな感があるが、世界には、隣国の兵士に家族や友人を殺されたという人が、まだまだたくさん存在する。いくら商業的、政治的には友好関係にあっても、その痛みと屈辱は絶対に忘れないという人も依然として存在する。そして、それは人間ならば当然の感情だ。ただ、そこは文明人の理性で、過去の大戦とは何の関わりもない現代人に直接敵意を向けないだけで、恨みつらみをきれいさっぱり忘れられるほど単純なものではないと思う。

そんな中、ついに南北首脳会談が実現し、北と南の指導者が手を取り合った。

私と同世代なら、映画『シュリ』を想起した人も少なくないのではないだろうか。

『シュリ(1999年)』は韓国に潜入した北朝鮮工作員のイ・ミョンヒョンと、韓国諜報部員のユ・ジュンウォンの悲恋を描いたスパイアクションだ。韓国では世界的メガヒットとなったジェームズ・キャメロンの『タイタニック』を抜いて、興行成績一位を達成した。

私もTV放映を見るまでは、韓国映画などまったく興味がなかったし、韓国の人々がどんな暮らしをしているのか、まともに知ることもなかった。

何の予備知識もないまま、チャンネルを合わせて、そのスタイリッシュな世界にびっくり。

北朝鮮工作員の正体を隠して、韓国の都市のペットショップ店員として働くミョンヒョンと、韓国諜報部員のジュンウォンは、熱愛中。近々、結婚の予定だ。
このワンショットで、「えーっ、日本のトレンディドラマとまったく同じじゃん!」と感激した私は世間知らず。

ミョンヒョンは二人の愛の記念に、ジュンウォンに川魚のシュリをプレゼントする。シュリは、朝鮮半島の川に生息し、南北を自由に泳ぎ回る、平和の象徴だ。実はこのシュリが……なのだ。

シュリ 韓国映画

ジュンウォンにプレゼントされたシュリは、韓国情報部のオフィスで大切に買われる。

一方、情報が筒抜けで、大事な証人を失ったジュンウォンと、パートナーのイ・ジャンギルは、なぜ情報が漏れたのか首をひねる。

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そんな中、北朝鮮はさらなる工作員を韓国に送り込む。近く開催される、南北首脳を迎えたサッカー大会を妨害し、北朝鮮に有利に国事を運ぶ為だ。

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送り込まれた工作員は、ナウでヤングな韓国市民として、ソウルの町に溶け込む。
「わー、ソウルも東京と同じじゃん」と感激した私は世間知らず。

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工作チームを指揮するパク・ムヨンは、ジュンウォンの元教官でもある。
韓国に潜伏するミョンヒョンにコンタクトを取り、ジュンウォンらの暗殺を命じる。

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公共施設のPCチャットで連絡を取り合うパク・ムヨンとミョンヒョン。
「わー、PCのキーボードがハングル文字だ」と感激した私は世間知らず。

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そうとは知らずに、居酒屋で歓談するジュンウォンたち。愛する彼女が北朝鮮工作員など夢にも思わない。
「わ~、韓国のナイトライフも大阪みたいじゃん」と感激した私は世間知らず。

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そんな中、韓国軍が開発した『新素材液体爆弾CTX』が何ものかに強奪される。北朝鮮工作員は、CTXを使って、南北合同サッカー大会を混乱に陥れるつもりだ。

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捜査が進中、ついに南北合同サッカー大会が開催。悦びに湧く両国民。

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厳重な警備の中、ついに南北両首脳が揃って観覧席に登場。サッカースタジアムの歓喜は最高潮に達する。

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ついにシュリの秘密が見破られ、ジュンウォンはミョンヒョンの正体を知る。
だが、彼らは任務を遂行しなければならない。
ついに銃を構えて向かい合う。

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この結末は、本編をご覧下さい。

*

南北分断が両国民の精神や歴史にどのような傷を残したか、私には想像もつかない。

喩えるなら、箱根のあたりで日本が分断され、東日本が社会主義、西日本が民主主義、日本アルプスを境に断絶してしまうようなものだろうか。
東京都がいつミサイルを発射するか、武装した埼玉県民が国境を越えて名古屋に潜入し、破壊工作を仕掛けるか、ヒヤヒヤしながら過ごすようなものだろう。
今でさえ「東京のビジネスマンが言うことにゃ・・」と、大阪のやり方とは合わない部分があるのに、軍事的にも、政治的にも対立するとなれば、国民のストレスも相当なものだろう。

映画『シュリ』が熱狂的に支持されたのも、我々には想像もつかない、奥深いところで、国民感情がそれを求めてきたからだろう。

今度の南北首脳会談も、政治的・経済的思惑があるにせよ、非常に大きな出来事であり、夢のツーショットと推察する。

今後、日中南北がどのような経緯を辿るかは分からないが、陸路で結びついたお隣は、リスクも大きいが、地理的、商業的メリットにも恵まれている。

「日本は島国で安全だ」という人もあるが、江戸時代や室町時代ならいざ知らず、グローバル化が進んで、人も、物資も、情報も、あらゆるものが国境を越えて活発に行き来している中、陸路をもたない日本は商業的には非常に不利な面がある。ラーメンひとつ輸出するにも、船か飛行機、1袋100円のインスタントラーメンが、国境を越える頃には、輸送コストや仲介料で膨れ上がって、2倍、3倍の値段になるのだから、海外の安価な製品に太刀打ちできるわけがない。日本のお菓子や民芸品や着物が欲しいという人も海外にも大勢いるが、1個300円もする大福餅を誰が買うのか、という話だ。その点、陸路で繋がれた欧州や中韓は強い。国境を越えて日常的に商売ができるし、野菜でも、饅頭でも、自家用トラックに積んで、その日のうちに届けることができる。日本なら、最低でも2日はかかるところを、彼らはそれ以下の時間、それ以下のコストで、どんどん取引を進めるのだから、彼らが本気でタッグを組めば、とても太刀打ちできないだろう。これからの時代は、歴史的感情より、金勘定だ。それを見込んで仕掛けた会談なら、彼らは相当に頭がいいし、商業的にも策士と思う。というか、そうせざるを得ないところまで、グローバル化の波は押し寄せているのだ。ベルリンの壁が取り壊されたのも、単に平和が目的ではない、西側資本の市場を東に一気に広げる目的もあったと。

しかし、真の動機が何にせよ、一つのハードルが取り除かれ、前に進んだことは素直に喜びたい。

1999年、映画『シュリ』が描いた夢の場面は……

シュリ 韓国映画

2018年4月27日に実現した。

南北首脳会談

私も映画『シュリ』がきっかけで、「現代の韓国(1999年の)」を知り、韓国へのイメージを一新したので、今時の中国や韓国の若者が、日本のアニメやアイドル歌手を見て、「日本すごい、好きになった」と思う気持ちも分かります。
サブカルチャーがまったく無力というわけでもないので、これからも、こうした文化的な交流は深まって欲しいですね。

以下、感想が重複しますが、何度もリライトを重ねているので、ご容赦下さい

2003年のメモ書き

『シュリ』地元 韓国で「タイタニック」を凌ぐ大ヒットとなったアクション映画。

北朝鮮の女スパイが、韓国の国家機密を入手する為、韓国情報部の敏腕エージェントに接近。二人は恋に落ち、結婚の約束をするまでになる。

しかし南北統一の動きを阻止しようとする北朝鮮特殊部隊の首脳暗殺計画『シュリ』が発動すると、彼女には恋人の抹殺命令が下り、彼女は任務と恋の狭間で激しく揺れ動く。

舞台はやがて南北首脳の観戦する合同サッカーチームの試合会場に移り、地下では、恋人のエージェント VS 北朝鮮特殊部隊の死闘が繰り広げられる。

ラスト、特殊部隊は壊滅し、韓国軍が銃を持って取り囲む中、彼女と彼は敵同士として銃を手に向き合うが、次の瞬間、彼女は走り去る首脳の車を狙撃し、彼は狙撃手である彼女の頭を自分の銃で撃ち抜く。だが彼女は愛する男の手に掛かって幸せだとでも言いたげに、彼の目を見つめながら、死んで行くのだ。

彼女が死んでから、彼は情報部の査問される。
「一年間、恋人として付き合いながら、彼女が北朝鮮のスパイだと気付かなかったのはおかしい」と、責める査問官に対し、彼女への想いは、義務や疑いよりも甘く強かったと答える彼。

そして、ここからがこの物語の核心。

「南北分断の歴史が、彼女のような悲劇を生みだした」と力説するのだが、なんとなんと、TVのオンエアではカットされているではないか。

おいおい、ここから続くセリフこそ、『シュリ』の魂であり、韓国民を「タイタニック」より感動させた共通の思いなのに、カットしてどうするんだ?!

それとも左寄りの放送局がオンエアすると、歴史の核心に触れるような部分は隠蔽されちゃうのかにゃ~と、TVの前で思い巡らせていた私。

結局、またビデオでレンタルして見る羽目になった。

2000年3月のメモ書き

2014年のレビュー

これは本当にブームになりました。

私にとっては初めの韓国映画。

それまで韓国は日本と全然違うようなイメージがあったのだけど、この映画を見て、日本と変わらんやん、と思って、びっくりした記憶があります。

冒頭の、北朝鮮の暗殺部隊の養成シーンは凄まじかったけどね(脱北者のインタビューを元に作ったとかいう話)。

それが何故か朝日放送の日曜洋画劇場で放映された時は、大事な部分がけっこうカットされていて、いろいろ政治的に微妙なのかしらねー、と思った次第。

一カ所、翻訳がおかしかったのが、北朝鮮のスパイが韓国のエージェントに言う、「ハンバーガーやら、コーラやら、口にしているお前らが、飢えた我が民の苦しみが分かるのか」というセリフ。

これもDVD版では全く違うセリフに置き換えられていて、どっちがよりオリジナルに近いのかは分かりません。

でも、この作品は面白かった。

やはり、そうきたか・・という展開だったけど、最後までハラハラさせられました。

シュリ [DVD]
出演者  キム・ユンジン, ハン・ソッキュ
監督  カン・ジェギュ
定価  ¥ 5,980
中古 28点 & 新品  ¥ 1,061 から
5つ星のうち 4.2 (90 件のカスタマーレビュー)

ギャラリー

冒頭、北朝鮮特殊工作員の訓練風景。実際の脱北者の証言に基づいて作られた・・という話です。
シュリ

韓国の核潜水艦開発部長や国家安全企画部員など、要人を次々に殺害する女暗殺者イ・バンヒ。
シュリ

韓国情報部員のユ・ジュンウォンはイ・バンヒを追う傍ら、恋人のイ・ミョンヒョンと幸せな日々を送っている。北と南を自由に行き交う『シュリ』という川魚が二人の幸せの象徴。
シュリ

情報部の機密が全て漏れている。一体、誰が、どうやって……。
シュリ

これが「ハンバーガーやら、コーラやら」の場面。
初回の放送時、確かにそう言ってたんだけどね。。
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