愛の試練は同じ重さでやって来る ~一緒に居ても、居なくても

同じ顔ぶれ、同じ資本が跋扈する ~なぜ社会のビジョンが必要なのかの中で、ヒロインのリズと、伯母のダナが、恋について語り合う場面で挿入していた台詞。

人生が思いがけない方向に流れていくことに対し、『運命には実体がない。それは幸運でもあり不運でもある』と運命について語り合う。

「いい人なの。自分でもどうしようもないくらい心惹かれてるわ。でも、どうしたらいいのか分からない。今にも心の熱に呑まれてしまいそうで……」

「盲目になるのが怖いのね」

「もう、ほとんど心の目は塞がっているわ。あの人が好きで、いつまでも側に居て欲しい、それしか考えられなくなってる。パパが倒れたのも私のせいよ。私が帰りたくない一心で、心の舵を左に切ったから……」

<中略>

「あなたは心の舵を左に切った……と言ったわね。好きな人と一緒に居たいがために、運の流れを変えようとした、と。

どのみち、運命に勝てない愛は、いずれ海の泡みたいに消えてゆく。

あなたが運命の輪をどちらに回そうと、愛とは常に試されるものよ。

楽しいことだけ存在する愛などなければ、簡単に真実に至る愛もない。

一緒に居ようと、居まいと、愛の試練は同じ重さでやって来る。

あなたが不安と淋しさに耐えられないようなら、愛もいずれ死ぬのよ」

海洋小説『曙光』 MORGENROOD (上) ボツ原稿

Morgenrood 曙光

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この記事を書いた人

石田 朋子

文芸愛好家&サブカルチャー・ファン。主に70年代~90年代の作品に思い入れがあります。寺山修司の名言『詩を作るより、田を作れ(揶揄)』をモットーに、好きな作品を次代に伝えることを目標にしています。海外在住につき、現代日本とは相容れない所がありますがご容赦ください。趣味はドライブと登山。