The Paris Macth スタイル・カウンシル 世界で三番目に好きなラブソング

The Paris Macth  スタイル・カウンシル 世界で三番目に好きなラブソング

The Paris Match

雨に煙るような夜の街。
いとしい男の面影を追って、さまよい歩く女の姿が浮かぶ。

それほど愛している訳ではない。
だけど、求めずにいない。

雨に濡れたトレンチコートのポケットに冷えた手を突っ込み、「またここで、あの人に会えるのではないか」と淡い期待を抱きながら、バーを渡り歩く女のイメージが浮かぶ。

そんな女の淋しい恋の情景を、気怠く歌い上げたのが、ポール・ウェラー率いる伝説のブリティッシュ・バンド、スタイル・カウンシルの『The Paris Match』。
歌っているのはポールではなく女性シンガーのトレーシー・ソーンだが、少しかすれたようなジャジーな歌声が、雨に濡れるパリの下町を思わせて、非常に印象的だ。

安っぽいドレスに、手抜きの薄化粧を重ね、「またここで、あの人に会えるのではないか」と淡い期待を抱きながら、あちこちのバーを渡り歩く女のイメージが浮かぶ。

恋の歌はいくつもあるけれど、『The Paris Match』は、忘れようにも忘れられない恋慕の想いに満ちて、まるで一編のフランス映画を見ているよう。

霧雨に煙るパリの下町を思わせる、隠れた名曲です。


The Paris Match オリジナル歌詞 & 日本語訳(Ken Takeuchi)

『カフェ・ブリュ』ライナーノーツより

UK is Best !

この曲も、フレンチ・バージョンや他のアーティストによるカヴァー曲があるところを見ると、やはり熱烈なファンが数多く存在するのでしょう。
ほんと、イマジネーションをかきたてられる曲ですから。

スタイル・カウンシルにもいろんな作品がありますが、これだけは際だって歌い継がれるような気がします。

Pops&Rockは、やはりUK(ブリティッシュ)に限りますね。

同じ英語圏でも、ヤンキーの作るポップスとはひと味もふた味も違う。

ジェームズ・レヴァイン指揮 メトロポリタン歌劇場(NY)で、いまいちオペラを観る気にならない所以。
(アメリカン・バレエ・シアターの『白鳥の湖』とか)

アメリカ人を歯間ブラシにたとえれば、英国人は爪楊枝。

実利より風流。

ケミカルより青竹なのだ、英国人のポップスは。

そんなわけで、UKを代表する天才アーティスト、ポール・ウェラー率いるスタイル・カウンシルもぜひぜひ聞いて欲しい。

この世界が分かれば、○○とか○○の音楽なんて、ただのウケ狙いにしか思えなくなるから。

アルバム『カフェ・ブリュ』の魅力

CDとライナーノーツ

イギリスの国民的バンド「ザ・ジャム」解散後、ポール・ウェラーが自分自身の趣味性と音楽的資質を思う存分爆発させたのが、キーボーディストのミック・タルボットと結成したこのユニット。
R&B、ソウル、ジャズ、ファンクなど、黒人音楽のエッセンスを英国的センスで仕立てたファッショナブルなサウンドは、世界中の音楽シーンに大きな衝撃を与え、ウェラーは再び時代の中心に立った。

【Amazon.comより】
The Paris Matchはここ20年でも最高の曲のひとつ。アンニュイだけど、ぎりぎりで美しい。

↑ まさにその通り。メロディといい歌詞といい、一枚の絵画を見ているようで、頭の中で一つのドラマが出来てしまう。
『カフェ・ブリュ』を買ったのは、当時の世界的ヒット曲で、ピアノだけで歌われるジャズ・テイストの『My ever changing moods』が目的だったのですが、トレイシー・ソーンが歌う『The Paris Match』の方に見事に転んでしまいした。

カフェ・ブリュ
by ザ・スタイル・カウンシル (CD)
定価  ¥ 13,550
中古 1点 & 新品  ¥ 13,550 から
5つ星のうち 5.0  (3 件のカスタマーレビュー)

Spotifyで全曲試聴できます。

これがスタイル・カウンシルの正式なデビュー・アルバムである。イギリス以外では、すでに(スピーク・ライク・ア・チャイルド)という7曲入りのミニ・アルバムが発表されているから実質的には2枚目になるわけだが、それはシングルを編集したものであった。

ポール・ウェラーは当初シングル中心に活動する方針を決めていて、世界各地で録音した4曲入りのEP盤をリリースする予定だった。実際にイギリスではそれが<スタイル・カウンシル・ア・パリ>となって発売された。そして最近、「次はチベットで学ぶのだ」という噂が入ってきて、チベットにははたしてレコーディング・スタジオなどがあるのかしらと懸念しているところへ、こうした当初の計画を変更して突然のニュー・アルバム、両面併せて13曲も収録された、レッキとしたアルバムが届いてしまったのである。

<中略>

まず、ポール・ウェラーは何故ジャムを解散しなければならなかったのか。
スタジオ録音としては最後になってしまった≪ザ・ギフト≫の時点ですでに彼には迷いがあったと思われる。≪ザ・ギフト≫は黒人のホーン・セクションを導入してジャムが大幅に様変わりしたアルバムで、無愛想だったジャムのサウンドに初めて色気が加わったと喜んだ人も多かった。ところが、この変化は彼にとって行き詰まりを打開する試行錯誤だったのだろう。それから六ヶ月後にジャムはあっけなく解散するのだ。

<中略>

結論から言ってしまうと、おかしな話だが、それができないのがポール・ウェラーなのである。
「自分達がこれからもぬくぬくやっていけると思う事が、自分で恐ろしかった」
普通の人間ならばまだまだやれると思うところを、彼にはそうした心理自体が耐えられない。地位を守るために醜態をさらけ出すのが、悲しいかな大多数の人間の性だが、彼の場合、むしろ自分を守るために地位を捨てたということだ。

<中略>

このアルバムはお世辞にもコマーシャルとは言えないし、ともすると趣味的、懐古的と誤解される危険性も多分にはらんだ内容になっている。ファンキー・ジャズ、ビー・バップ、シャンソン、ラップといった様々な形式(=スタイル)で、雰囲気はモロにオールディーズだからだ。

しかし、ここで重要なのは、ジャム時代に比べて信じられないくらい思慮深くなったアコースティックな楽器の音色と、比重の高くなったボーカルである。張りがあって、本当に清楚な響きのこのサウンドは、ジャム時代の神経質なギター・ワークと共通の潔癖性をもっている。つまり「カフェ・ブリュ」のフランス語タイトルが示すとおりに、りりしいのだ。そして、彼一流の清潔の美学をもってすれば、様々なスタイルの中に彼自身が埋没してしまっていることもない。いや、レコードをきけば誰にでもわかることだが、スタイルに対する審美眼こそ、ポール・ウェラーその人の存在感を表しているとさえ言える。

とにかく、ジャムがエキサイティングでないと感じたポール・ウェラーは、惜しげもなくジャムを解散し、スタイル・カウンシルによって、萎えかけた音楽の情熱を取り戻すことに成功したのである。

増井修(ロッキング・オン)スタイル・カウンシル CD『カフェ・ブリュ』ライナーノーツより

ライナーノーツに関するポリシーはこちら

スタイルカウンシル ライナーノーツ

スタイルカウンシル ライナーノーツ

ライナーノーツ

MY EVER CHANGING MOODS

これが私をノックアウトした『MY EVER CHANGING MOODS』。

この曲は、ポップ調のものと、動画のジャズ・ピアノバージョンと二つあって、世界的にはポップ調の方がヒットしたのですが、『カフェ・ブリュ』にはピアノ・バージョンが収録されています。
初めて聞いたのは高校生の頃でしたが、まるで自分の心情を物語っているような感じで、毎日のように聞いていました。

しかし、歌詞はけっこう尖ってます。

MY EVER CHANGING MOODS オリジナル歌詞 & 日本語訳(Ken Takeuchi)
『カフェ・ブリュ』ライナーノーツより

その他のおすすめ

The Logers

この『The Lodgers』も大変ヒットしました。
さびの部分がとても印象的です。

There’s only room for those the same
Those who play the leeches game
Don’t get settled in this place
The lodger’s terms are in disgrace

この曲も女声のバックコーラスが素晴らしく、イントロだけでも印象に残ります。
ポール・ウェラーはアレンジも上手い。

Walls Come Tumbling Down!

「Walls Come Tumbling Down!」もヒットチャートを制したいい曲でした。
この頃のポップス・ベストテン、本当に色鮮やかな「天才戦国時代」という感じでしたね。

アワ・フェイヴァリット・ショップ
by ザ・スタイル・カウンシル (CD)
定価  ¥ 1,545
中古 14点 & 新品  ¥ 1,409 から
5つ星のうち 4.1  (5 件のカスタマーレビュー)

ポール・ウェラーは、英国の美男俳優ルパート・エヴェレットと親しいんですよね。
このジャケットの背景に飾られているのは、ルパートの代表作『Another country』のポスターです。
このCDは彼らのベスト盤的な一枚です。

Lodgers(邦題:『ロジャース』)は、こちらのCDに収録されています。

Confessions of a Pop Group

上記に続いて、またまた新たな一面を打ち出した異色のアルバム。

ジャズともクラシックともつかぬ上質なサウンドと壮大なスケールを感じさせる一枚。
音楽全体に透明感があり、宇宙的な広がりを感じさせる。
ジャケットや中身のイラストも大変凝っていて、ポールの才能を余すことなく表現した珠玉の一枚。
イラストだけでも見る価値があります。
特に『エデンの庭師』の美しさは白眉のもの。まるでクラシックの小組曲でも聴いているような感じです。
ストリングスが非常に素晴らしい。

コンフェッション・オブ・ア・ポップ・グループ(紙ジャケット仕様)
by ザ・スタイル・カウンシル (CD)
定価  ¥ 4,980
中古 5点 & 新品  ¥ 3,800 から
5つ星のうち 4.5  (4 件のカスタマーレビュー)

最後に、このアルバムに収録されている、夢のように美しいヴォーカルをどうぞ。

エデンの庭師 ~ The Garden of Eden A Three Piece Suite ~

トレーシー・ソーンについて

The Paris Match で素晴らしい歌声を聞かせるトレーシー・ソーン。
スタイル・カウンシルのみならず、いろんなアーティストとコラボされています。

興味のある方はぜひ Dig して欲しい。

そんでも、The Paris Match に優る曲は無いけども。

Oh! The Divorces は『離婚』というタイトルの歌。でもメロディと歌声は綺麗ですよ。
この曲が収録されている アルバム『Love and its Oppsite』 はカントリー調が好きな人におすすめです。
優しく、アンニュイなムードはThe Paris Matchに通じるものがあります。

優れた音楽は融合体

追記:2018/05/13

ジャズ、ポップス、イージーリスニング、クラシック、R&B、等々。

すべての楽曲は何かにカテゴライズされ、カテゴリーの中で語られるが、本来、音楽にカテゴリーなるものは存在しないと思う。

ショパンやチャイコフスキーのように、至高の存在とされるような古典の名曲も、地方で歌い継がれる民謡や俗歌にヒントを得ているし、彼らもまた先人であるベートーヴェンやバッハに音楽の基礎を学んだり、同時代のライバルに刺激されたり、己一人でゼロから立ち上げた……ということは断じてない。

優れた音楽は、様々な音楽的要素の結晶であり、主旋律はポップスでも、、どこかにジャズやクラシックの血筋を垣間見るのが本当だと思う。

スタイル・カウンシル=ポール・ウェラーもその一人で、前身のザ・ジャムが解散した時、ずいぶん世間を騒がせたようだが、「ザ・ジャム」「モッズ・スタイル」「パンク」という枠に収まりきらなかった人なのだろう。スティングも、ザ・ポリスであれほど一世を風靡しながら、途中でソロ活動に転じ、ジャズと融合した『ブルータートルの夢』というアルバムを制作し、『シンクロニシティ』の世界観とは似ても似つかぬ音楽をやりだして、ザ・ポリスの内紛にとどめをさしたけれど、こういう天才肌の人を捉まえて、いつまでもロックをやれ、世間の期待に応えろ、と要求する方が無理があると思う。

彼らは自己増殖するAKIRAのテツオと同じで、耳にするもの、触れるもの、片っ端から己の中に吸収し、ぶくぶく才能を肥らせていくモンスターなのだから、ジャズでもオペラでも好きにさせるのが一番いい。

才能ある者に「やめろ」ということは「死ね」というのも同義語なのだから、彼らが自分の望みとは全く異なる方向に突っ走っても、「裏切られた」「失望した」などと思わず、過ぎ去った青春の日々を思いながら、遠くから見守るのがファンの正しい姿だろう。

ポールの真意がどこにあるのか、目指す音楽は何なのか、私には分からないけど、これだけは言える。

19歳の多感な時期にスタイル・カウンシル――とりわけ The Paris Match に出会えたのは最高に幸運だったということ。

初稿 1998年秋
第二稿 2010年4月30日

 
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