鉱業の歴史を変える海底鉱物資源の採鉱プラットフォーム

20. 鉱業の歴史を変える海底鉱物資源の採鉱プラットフォーム

海底鉱物資源の採掘

海底鉱物資源のポテンシャルについては、20世紀後半から指摘されていますが、水深数千メートルから効率的に採掘するのは技術的に非常に困難であり、いまだそれを実現した企業はありません。
しかしながら、研究開発は地道に進んでおり、いつの日か、その洋上プラットフォームを目にする日も来ると思います。
それが日本か、海外かは分かりませんが、ここに描かれた洋上の採鉱プラットフォームに似ていることを願うばかりです(^^)

本作に登場する海底鉱物資源の採鉱プラットフォームのモデルについては、実際に開発中の『Nautilus Minerals』を参考にしています。

【あらすじ】 洋上の採鉱プラットフォーム

惑星表面積の97パーセントが海洋で覆われた海の星アステリアで、ヴァルターは潜水艇のパイロットとして海底鉱物資源の採掘プロジェクトに携わることを決意する。
後方支援の拠点であるアステリア・エンタープライズ社を訪れたヴァルターは、アル・マクダエルの腹心の部下であるセス・ブライト専務からローレンシア海域に広がる海台クラストと、採掘が世界の構図を変える可能性について聞かされる。
その後、アル・マクダエルと洋上の採鉱プラットフォームを訪れたヴァルターは、その威容と機能に圧倒され、アル・マクダエルの本気を思い知る。

【抜粋】 ティターン海台と採鉱システム

※ アル・マクダエルに連れられ、初めて洋上の採鉱プラットフォームを訪れる

ティターン海台の鉱物資源を採掘する海上基地は全長180メートル、幅60メートルの半潜水式のプラットフォームだ。海面下のロワーハルには水平方向に360度回転可能なプロペラを装備し、アンカーなしでプラットフォームを定位置に保持することができる。石油リグと異なるのは、何階層にも及ぶ箱形ではなく、調査船のように平べったい形状をしている点だ。頻繁な機材の上げ下ろしに対応できるよう、柵の無いオープンスペースも広く設けられている。

プラットフォーム中央には高さ約60メートルのタワーでリックが建造され、遠目には深海掘削船のようにも見える。一本の長さ約20メートルの揚鉱管を次々に連結し、水深3000メートルの海台まで一気に打ち下ろす、採鉱システムの要だ。
タワーでリックの基底部には『ムーンプール』と呼ばれる幅10メートル四方の開口部がある。文字通り、プールのように海面に開け、機材や揚鉱管を海中に降下する為のオープンスペースだ。

ムーンプールを取り囲むワーキングエリアは、上甲板から下層にかけて三階層からなり、調査機器や無人機を降下したり、揚鉱管のメンテナンスを行う為のクレーンやウィンチが備え付けられている。高さ一メートルの黄色い安全柵が張り巡らされているが、落ちれば海面に真っ逆さまだ。他にもクレーンのオペレーションブース、作業台車、道具箱などが設置され、さながら三階建ての工場みたいである。

プラットフォームの甲板は「ブリッジ(司令および居住区)」「採鉱システム」「重機オペレーション」の三つのエリアからなり、それぞれに独立した小組織が統括している。

東側のブリッジはヘリポート付きの五階建てで、管制室、オフィス、アコモデーション(宿泊施設)からなる。その続きに、採取された鉱物の洗浄や選別、貯蔵、積み出しを行う製造・運搬エリアがあるが、大部分は下層にある為、威圧感はない。

甲板中央には、採鉱システムの根幹を成すタワーでリック、揚鉱管ラック、ムーンプール、システム制御室があり、下層には全長4000メートル以上のケーブルワイヤーを巻き取るパワーウィンチと動力機関が備わっている。ここでは有策無人機が海中作業の大半を行う為、その制御システムも深海調査船レベルだ。

西側のオペレーション・エリアには海台クラストを採取する掘削機、集鉱機、これらの重機と調査機器の整備を行う格納庫、重機と機材の海中降下に使う大型パワーアーム、Aフレームクレーンの他、ウィンチ、ワイヤー、発電機、コンプレッサーなど、多種多様な機材が設置されている。頻繁に機材の出し入れを行う為、安全柵が設けられてない箇所も多く、ムーンプールに次いで神経を使うエリアだ。ちなみに、プロジェクト・リーダーのジム・レビンソンが落水したとされるAフレームクレーンの作業場も安全柵はなく、一歩間違えば三メートル下の海面に落下し、あっという間に潮に流される。

そして、これらの設備はブリッジ最上階にある管制室で常時監視され、その情報はローレンシア島のエンタープライズ社とトリヴィアのMIGエンジニアリング社でもリアルタイムで共有することができた。

いわば、採鉱プラットフォームは、司令、操作、製造、移送、補給、従業員の生活に至るまで、一つの動線で結ばれた共同体だ。島から隔絶された悲壮感はなく、ギルドの村がそっくり引っ越したような連帯感がある。

何事も先行者利益:コンピュータシミュレーションの技術

採鉱プラットフォームの設計工程で、コンピュータシミュレーションの技術が役に立ったとの話から。

「これが新しい仕事場だ。調査船とは異なるが、求められる職能は同じだ」

「いつから建造を?」

「194年から198年にかけてだ。それ以前はドリルシップ型の作業船で実験を繰り返してきた。採鉱システムに関しては、大半がコンピュータ・シミュレーション技術の賜だ。安全と省コストの為にな」

「どんな風に」

「最初は無人探査機やプローブで徹底的にデータを集め、解析システムの中にティターン海台とそっくりな環境を作り出す。その中で掘削機や採鉱機を設計し、採鉱実験をするんだ。数人の技術者と専用コンピュータがあれば、従来百人がかりでやっていた設計や実験の手間もコストも十分の一で済む」

「その技術もMIGで開発を?」

「会社を丸ごと買収した。この技術が注目されるずっと以前にな。社員十人の小さな会社だったが、みな必死でやってくれたよ。今はその有償開放特許のロイヤリティだけで目抜き通りにビルが建つ。噂を聞いて後から真似ても、もう遅い。何事もタッチアンドゴーだ。先行者が一番多くを得る」

【リファレンス】 現実に開発が進む海底鉱物資源の採掘計画

海底鉱物資源の採掘計画については、実際にNautilus Minerals
という会社が取り組んでいますし、日本でも本格的に実験やプロトタイプの構築などが行われています。どちらが早いか分かりませんが、海洋科学者や環境保護団体から海洋汚染や生物圏破壊の懸念の声が上がっているのも確か。ちなみにアステリアには微生物しかないという設定ですが、そんなことを言い出せば宇宙開発も到底無理だし、人間の行くところ、汚染はつきものとしか言いようがない。

こちらは海底鉱物資源の採掘が社会にもたらす影響についてインタビューに答えるもの。
しかし、コメントを見る限り、環境保護の観点から、好意的な人は皆無のようです。
現実の採掘は確実に深海の生物圏を破壊しますからね。

それに対する環境破壊の懸念は「生命の始まりは微生物 産業開発と海の宇宙的価値で取り上げています。

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『曙光』上巻 ~”海底鉱物資源を採掘せよ”から”屁理屈だけは超一流”まで



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ニムロディウムという架空の金属元素を中心に、鉱業、海底鉱物資源、深海調査、海洋情報ネットワーク、建築&デザインなどをテーマに描く人間ドラマ。水深3000メートルに眠るニムロディウムの採掘は世界を変えるのか。生の哲学を中心に海洋社会に生きる人々の願いと攻防を描きます。Google Driveにて無料サンプルPDFも配布中。

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