集鉱機の降下と水中の接続作業 ~『運』も成功の要素

集鉱機の降下と水中の接続作業 ~『運』も成功の要素

オールインワン型・採鉱システム

海底鉱物資源の採鉱システムにも様々なアイデアがあり、理想は、鉱物資源の剥離(海底の基礎岩から、有価な鉱物資源が豊富に含まれた層だけを効率よく砕いて、剥がす)、集鉱(深海底に散らばった鉱物資源を収集する)、揚鉱(集鉱機が集めた鉱物資源を海上施設まで安全に送り届ける)、この三つの機能を一つの重機に集約したオールインワン型でしょう。

しかしながら、水中技術の困難や商業的経験の皆無などから、オールインワン型は問題が多いとされており、私が調べた中では、破砕機と集鉱機の二台に機能を分散するアイデアが実用的とのことでした。もっとも、今後、現実に登場する採鉱システムは、オールインワン型かもしれません。

単純に考えれば、パワークレーンで重機を海底に沈めるだけの作業ですが、洋上プラットフォームはたえず波風にあおられますし、海中では潮流や水圧などによって大きな影響を受けます。どれほど精密に計算しても、水深数百メートルから数千メートルの海底に向けて、正確に機材を降下するのは、熟練の技術と知識が必要です。

このパートでは、人柄卑しいプロジェクトリーダーが抜けたことで、集鉱機の降下や複合ケーブルの接続などがスムーズに運ぶ様子が描かれています。
リーダーが抜けたのは不測の事態でしたが、どんな完璧なプロジェクトも現場では何が起こるか分からないもの。
その一部を『運』と見ることで気構えも変わる……というのが、サブリーダーのマードックの考えです。

このパートは海洋小説『曙光』の抜粋です。
詳しくは作品概要と記事一覧をご参照下さい。
冒頭部の無料サンプルはGoogle Drive からDLできます。

【あらすじ】 破砕機と集鉱機の降下

それぞれの想いが交錯する中、海底鉱物資源の本採鉱に向けて、破砕機と集鉱機の降下が実施される。若いオペレーターの奮闘もあり、降下作業は前回よりスムーズに進行。マードックは物事における『運』というものについてヴァルターに説いて聞かせる。

【抜粋】 水中の接続作業 ~運も成功の要素

破砕機の海中降下

※ 接続ミッションの前準備として、破砕機と集鉱機の海中降下が行われる。

朝日が立ち上る中、全長8メートル、高さ3.8メートル、幅4メートルのビートル型破砕機が甲板東端のAフレームクレーンまで搬出されると、数人のオペレーターが作業台や梯子を使って、機体上部の真ん中に直径四センチの金属製パワーケーブルを固定する作業を始めた。
それと同時に、機体の数カ所に、クレーン巻上げ用ワイヤーロープを固定する。
全ての取り付け作業が完了し、安全が確認されると、運転台に合図が送られた。

クレーン脇の運転台では熟練のオペレーターが慎重にコントローラーを操作し、ゆっくりとAフレームを海側に回転させる。次いで、全長8メートルの破砕機が海上に降り出され、機体のバランスを保ったまま海面に着水すると、白い水しぶきを上げながら海中に降下を始めた。重機の降下と共にウィンチも回転を始め、徐々にロープを繰り出してゆく。

作業の模様は、タワーデリックのオペレーションルームとブリッジの管制室でモニタリングされ、映像はエンタープライズ社の採鉱事業部にもイントラネットで中継される。

ブリッジで指揮を執るブロディ航海士の仕事は、破砕機の位置を正確に捕捉しながら、プラットフォームの底部に設置された六基のスラスタを微調整し、プラットフォームを定位置を保つことだ。万一、クレーンと破砕機の位置が大きくずれれば、ケーブルが引っ張られ、ウィンチや破砕機に深刻なダメージを与える。今日は終日好天で、高波や強風の恐れはないが、プラットフォームを定位置に保つ重要性は晴天も雨天も変わらない。

タワーデリックのオペレーションルームではマードック達が破砕機に取り付けた計器のデータを慎重にモニタリングしながら、クレーンのオペレーターと頻繁に連絡を取り合っている。

破砕機は重力に従って海底に沈んで行くが、海中においては長大な紐にぶら下がった重石と同じだ。その動きは決して一定ではなく、波や海流の影響を受けて振り子のように微妙に揺れる。それも計算に入れて安全設計されているが、破砕機が無事に海底に着底するまでは予断を許さない。

直径四センチのパワーケーブルに吊り下げられた破砕機は、一分間に三〇メートルから四〇メートルの速さで水深3000メートルの海底に降りて行く。順調に進めば、一時間四〇分ほどで着底する予定だ。

ヴァルターはマードックの後ろで一緒に作業を見守った。破砕機に取り付けられた水中カメラを通して、海中の様子をライブで観察することができるが、伝送用のアンビリカブルケーブルは未接続の為、音波を使って海中から送られてくる映像はあまり鮮明とはいえない。

降下開始から半時間、破砕機が水深1000メートルを超えると、マードックはムーンプールで待機する別チームに有索水中無人機『ヴォージャ』の降下を指示した。

ヴォージャは縦80センチ、横50センチ、高さ60センチで、高性能の水中カメラと小回りの利く二本のマニピュレータを備えている。今回の任務は深海の状況を把握し、破砕機が海底に着底したら、Aフレームクレーンの金属製パワーケーブルを操縦用のアンビリカブルケーブルに付け替えることだ。

ヴォージャのオペレーションを担当するマルセルはオペレーション・リーダーのノエ・ラルーシュとメインコントローラーに付き、計器の状態を確認する。ライト、カメラ、マニピュレータ、電気系統、油圧システム、すべて正常と判断されると、ムーンプールのチームに合図を送り、降下を開始する。

ヴォージャを繋ぐアンビリカブルケーブルも全長3000メートルだ。高さ三メートルに及ぶケーブルストアウィンチ、ドラムケーブルエンジン、エンジン制御室は下層レベルのマイナス1からマイナス2にかけて設置されている。

エンジン制御室の操作により、ヴォージャの降下が始まると、水中カメラの視界もあっという間に闇に包まれ、一分間に平均三〇メートルから四〇メートルの速さで破砕機を追いかける。順調に進めば一時間四〇分ほどで水深3000メートルに達する予定だ。

破砕機と無人機の二本のケーブルが海中でくるくる絡まることはないが、それぞれの位置を捕捉するのは重要な課題だ。遠すぎると作業に支障をきたし、近すぎるとトラブルの危険性も高まる。いずれも深海で目視することはできず、それぞれの機体に取り付けられた発信器だけが頼りで、シグナルを追うオペレーターの眼差しも真剣だ。

オペレーション開始から二時間半後、まず破砕機が水深3000メートルの目標地点に着底した。

破砕機にもカメラは取り付けられているが、着底の衝撃で微細な堆積物が砂煙のように舞い上がり、視界を完全に遮っている。それが収まるまで数十分は待たなければならない。地上ならとんとんと進む作業も、深海では一つ進んでは止まり、の繰り返しだ。

さらに一時間後、ヴォージャが水深3000メートル付近に到達した。破砕機までの距離は五〇メートルほど、そこから小さなスラスタを使って破砕機まで接近する。

もちろん目視はできない。互いに発する音波だけが頼りだ。

マルセルが慎重にスラスタを操作し、ついに水中カメラで破砕機を撮影できる距離まで接近すると、ヴォージャは破砕機の前後左右を一周し、機体や海底の様子をハイビジョン画像で送ってきた。

ヴォージャを繋ぐアンビリカブルケーブルは、Aフレームクレーンの金属製パワーケーブルと異なり、内部に電源、デジタルビデオ、データシグナル、光ファイバー通信などの経路を備えている。その断面は数十本のストローを束ねたような構造をしており、腐食耐性に優れた金属素材で頑丈に覆われている。
高機能のアンビリカブルケーブルで繋がれた有索無人機のメリットは、ハイビジョン画像のような大量のデータを瞬時にやり取りし、電力を海上から直接供給できる点だ。有索機の操作には直径数メートルのウィンチやドラムエンジンなど大型の張力制御装置を必要とする為、自由度や手軽さでは自律型水中ロボットに劣るが、ハイビジョン映像や精密なハンドリング操作などを必要とする場合は有策の方がメリットは大きい。

ヴォージャが送ってきたハイビジョン画像を見ると、ヴァルターが兼ねてから指摘していた通り、着底した箇所には約九度の傾斜があり、破砕機もお尻が持ち上がるような格好になっている。だが、ケーブルの付け替えに支障ははなさそうだ。

ヴォージャは破砕機の上部に回り込むと、全長六〇センチのマニピュレータのアームを伸ばし、機体の天井部に接続されたAフレームレーンの金属製パワーケーブルを外した。カメラを通して完全に離脱したのを確認すると、甲板部のオペレーターに合図し、パワーケーブルを巻上げる。

それと入れ替わりに下層のエンジン制御室に第二の指示を出し、プラットフォーム後方に設置された二基目の大型ウィンチから破砕機に繋ぐアンビリカブルケーブルを海中に降下する。

破砕機のアンビリカブルケーブルはヴォージャのものより一回り太く、より多くの電気・通信経路を有している。ケーブルの全長は5500メートル、ケーブルを収納するドラムの直径は4メートル近い。

ケーブルの先端には直径50センチの金属コネクターとアンカー部材が取り付けられ、それ自身が重錘の役目を果たして、ほぼ垂直に海中を降下する。

プラットフォームが定位置に保たれる限り、何百メートルにも渡ってケーブルの先端が流されることはないが、それでも破砕機との間に数十メートルの誤差は生じる。
また波や潮流の影響を受け、ねじれ、屈曲、切断といったケーブル損傷の危険性もある。

オペレーター、エンジン制御室、航海部など、複数の部署でデータをやり取りしながら、その都度、プラットフォームの向きやケーブルの降下速度を微調整するが、それも好天に恵まれればこそだ。ひと度、海が荒れれば揚収を余儀なくされることもあり、何事も『計画通り』とはいかない。

その上、ドラムエンジンをフル回転しても、ケーブルの先端が水深3000メートルの破砕機に届くまで数十分は待たねばならず、プロセスの一つ一つが冗長だ。

<中略>

そうして50分後、ようやくアンビリカブルケーブルが海底に到達し、ヴォージャのマニピュレータがケーブルの先端を捕捉した。アンビリカブルケーブルを送り出すドラムエンジンも一旦停止し、次の指示を待つ。

アンビリカブルケーブルの先端は破砕機の約40メートル上方、北東方向に20メートル離れた位置にある。ヴォージャがケーブルの先端を把持して破砕機まで接近するにはやや遠すぎる距離だ。

そこで破砕機の専任オペレーターが破砕機に音響信号を送り、燃料電池を一時的に通電して、破砕機のクローラーを動かした。水深3000メートルの海底を、破砕機はキャタピラ車のようにゆっくり北東に進み、アンビリカブルケーブルとの距離を詰める。

そうしてケーブル先端と破砕機の接合部の距離が半径一メートル内に収まると、ヴォージャがマニピュレータのアームをいっぱいに伸ばし、ケーブル先端に取り付けられた直径五〇センチの金属コネクターを把持した。

同時に、ドラムエンジンがゆっくり回転し、ケーブルをもう40メートルほど抽出する。

ヴォージャは金属コネクターを把持しながら真っ直ぐ降下し、ついに破砕機の1メートル真上まで接近した。

「ここからがマルセルの腕の見せ所だ」 

マルセルは主操縦席で水中カメラの画像を見ながらスラスタを調整し、さらにケーブルの先端を破砕機の接合部に近づける。

強力なハロゲンライトとハイビジョンカメラを使っても、ヴォージャの視野は人間の眼よりはるかに劣る。カメラの位置によっては死角ができたり、奥行きが掴めなかったり。投光器の光が反射して対象物がぼやけたり、周囲の堆積物が舞い上がって視界が遮られることもある。

マルセルは左右のアームコントローラーを器用に操作し、深海でウミヘビのように揺らぐケーブルの先端をしっかり把持しながら、ゆっくり破砕機の接合部に近づけた。接合部は直径二〇センチほどの凹型のフランジで、ケーブル先端の金属コネクターと接合すれば、自動的に周囲の部品が回転し、強固に嵌まり込む。

マルセルはノボロスキ社の実験用プールで何度も練習した通り、マニピュレータをいっぱいに伸ばすと、金属コネクターをフランジの凹部に差し込んだ。凹凸が完全に合致すると、その脇の小さな制御盤にグリーンランプが点灯し、フランジ周囲のリング状の金属部品が一斉に回転を始める。すべてが完全に固定されると、二つ目のグリーンランプが点灯し、制御盤のその他のランプも一斉に点灯する。

最後に、マルセルはマニピュレータの指先で白いダイヤルレバーをOFFからONに切り替えた。

接続操作が完了すると、海上のオペレーションルームから、ケーブルが完全に接続されたかどうかを確認する電気テストを行う。

こちらのモニターで異常なしを確認すると、ヴォージャは破砕機の左側面に回り、機体後部に取り付けられた操作盤の大きなダイヤルスイッチをOFFからONに切り替えた。

続いて、下方にある三つの親指大のトグルスイッチを次々に押し上げ、三つのグリーンランプが点灯すれば完了だ。

再びオペレーションルームから電気テストを行い、安全が確認されると、マードックは動力伝達システムのワークステーション担当に通電開始を告げた。下層階のワークステーションには四人のスタッフが控え、慎重に電気システムを稼働する。それと同時に破砕機のヘッドライトが点灯し、四つのクローラーがゆっくり動き出す。海底面に約九度の傾斜はあるが、走行に問題はなさそうだ。東に50メートル前進し、何度かUターンしたところで一旦停止する。

「キャタピラの方は問題ない。次にヘッドの動きを見よう」 
マードックは破砕機の操縦担当者と連係を取りながらカブトムシのようなカッターヘッドを持ち上げ、前後左右に旋回させた。動作に異常は無く、遠隔システムも円滑に作動している。

次にカッターヘッドを下げ、クラストを実際に削ってみる。

長さ50センチの鋭いピットが一面に取り付けられた球状の二つのヘッドを回転させながら、鉱物の皮のように基礎岩を覆うクラストを削り取っていく。
たちまち微細な堆積物が砂煙のように巻き上がり、ヴォージャのハイビジョンカメラは埃を被ったように視界が遮られた。代わりに至近距離から高分解能の水中音響カメラで海底面の様子を撮影し、リアルタイムで分析したデータ画像を見ると、クラストが細かく砕かれ、ローラーで均したように破砕機の通り道に堆積している。

だが、商業的に価値のあるクラストだけがきれいに削られているかどうかは、海上に引き上げてみないと分からない。クラストと一緒に無駄な基礎岩まで大量に吸い上げ、収益より運営コストの方が嵩張るようでは到底採鉱事業として成り立たないからだ。その評価に少なくとも数ヶ月から一年は掛かるし、市場の反応も含めれば、それ以上の歳月を要する。プラットフォームに『数字に強いゼネラルマネージャー』が必要なのはその為で、ダグやガーフィールドが今度の身の振り方について覚悟を据えなければならない所以でもある。

そうして一通りテストが済むと、マードックは破砕機に関しては問題なしと判断し、続いて集鉱機の海中降下の指示を出した。前回と同じように甲板後部で集鉱機にAフレームクレーンの金属製パワーケーブルを接続し、クレーン・オペレーターが海面に降り出して、ゆっくり降下する。

<中略>

ヴォージャが集鉱機に接近し、ハイビジョンカメラで確認したところ、右前方のクローラーが高さ50センチほどのクラストの段差に乗り上げている。アンビリカブルケーブルの接続に支障は無いが、確実に接合するには機体をもう少し均等に保つ必要がある。

オペレーターが集鉱機に音響信号を送ると、集鉱機の燃料電池が一時的に通電し、全体のクローラーが僅かに後退した。段差から降りると、機体もほぼフラットになり、より操作しやすいポジションになった。

続いて、ヴォージャが金属製のパワーケーブルを取り外すと、今度は集鉱機に接続するアンビリカブルケーブルが海中に降下され、前回と同じ要領でケーブル先端の到着を待つ。

「まったく、海中作業というのは手探りのコンビネーション・ダンスだよ。陸上のオペレーションもチームワークが大事だが、海はそれ以上だ。深海の場合、現場全体を目視することができないし、海上と海底で自在に情報交換できるわけでもない。海底の様子も、水深数千メートルから跳ね返ってくる音響とか、水中カメラの映像とか、得られるデータも限られて、その分析能力も人や機材によって様々だ。いくら無人化の技術が進んで、水深一万メートルを自由に動き回る水中ロボットが登場しても、海上から一人で操作するのは絶対に不可能だし、いくら腕のいいオペレーターがいても、海が荒れれば操作を中断せざるを得ない。技術より運が左右する部分も大きい」

やがて集鉱機に接続するアンビリカブルケーブルの先端が到達すると、さっきと同じ要領でマルセルが集鉱機に接続し、通電を開始した。

その様子を見ながら、「今日は本当に運がいい」とマードックがしみじみ言った。

「運だって?」

「そうさ。初めて破砕機を海底に降ろした時は、あれが動かない、これが動かないのトラブル続きで、このまま海底から揚収できずに終わるんじゃないかと皆が血相を変えたものだ。その次は予報に反して海が荒れ出して、途中でケーブルを揚収する羽目になった。時化が収まるまで二〇時間も待たされた。その次はヴォージャのグラバーが開かず、電気系統を修理して接続作業を再開するのに一週間待ち。そうかと思えば、まさかのケーブル破損で泣かされたこともある。全長5500メートルのケーブルからわずか1センチの亀裂を探すんだ。皆、涙目だ。それでも、よく乗り切ったよ」

マードックは肩の凝りをほぐしながら言った。

「よく理事長が言ってたな。最後は『運』だと。準備万端、最高のコンディションで稼動しても、突然、問題が生じることがある。それもスタッフの技術や精神性とは何の関係もない、悪天候や病気、取引先の倒産や条例の変更など、魔が差したとしか思えないような事が原因だ。だが、その度に落胆するのではなく、運を味方につけるような気構えを持てと言われた。技術が運を呼ぶのか、運が技術を磨くのか、僕には分からないけど、最後は何か、人知を超えた巡り合わせによって物事が成就するのは本当だと思うよ。その証拠に、今日の現場の雰囲気はテスト採鉱の時とまったく違う。スタッフのミスを罵る人間がないからだ」

「ジム・レビンソン?」

「まあね」
マードックは複雑な表情を浮かべた。
「マルセルの動きを見れば分かる。いつも背中でびくびくしてたから。だが今日は本当にリラックスしてる。操作もビックリするほどスムーズだ。いつもコネクターの接続だけで半時間かかったのに、今日は十五分で完了だ」

「言葉は悪いが、レビンソンがいなくなって運が向いたということ?」

「スポーツでも、ビジネスでも、『運か実力か』という話になるだろう。運と言えば人間の努力など何の意味も無いみたいだし、逆に実力だけでは説明のつかない部分もある。僕だって『採鉱システムに成功した秘訣は何ですか』と訊かれたら、「努力半分、運半分」と答えるよ。今日が好天に恵まれたのも運なら、今ここにレビンソンではなくお前が居ることも運に違いない。つまり、そういうこと──どんな事も自分一人の努力では成り立たないし、ある部分は運に左右される。その不可思議を謙虚に受け入れることで、機知や忍耐力も磨かれる。でないと、万一失敗した時、自責の念に押し潰されるし、逆に成功すれば天狗になるだろう。努力半分、運半分と大きく構えることで、自分も周りも追い詰めることなく、いつかは成功のチャンスを掴めると理事長は教えたいのだろう」

【リファレンス】 無人機の海中降下の実際

こちらが実際に水深3000メートルに無人機を海中降下する様子です。
本作に登場する集鉱機や採鉱機は7メートルから9メートルの大きさで、パワークレーンを使いますが、有策無人機の降下はこんな感じです。

一般的な無人機のウィンチ。
水深数千メートルまで到達するような規模だと、ウィンチの大きさも大人の身長の何倍にもなります。

ウィンチ 無人機

Photo : https://www.shgroup.dk/systems-products/winches/rov-winches.html

ケーブル ドラム

実際に日本で運用されている『かいこう』のパンフレットが参考になると思います。興味のある方はぜひ。

http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/data/doc_catalog/media/be_sp-kairei_all.pdf
海洋調査船

無人機の海中作業のオペレーションの一例です。

こちらは石油リグのムーンプール。

洋上プラットフォームのオペレーションについて、こちらも参考になると思います。

ウォールのPhoto:Triton ROV

Kindleストア

上巻の冒頭部を収録した無料版PDFはGoogle Driveにあります。
閲覧は無料です。モバイルでも表示可能。
『曙光』上巻 ~”海底鉱物資源を採掘せよ”から”屁理屈だけは超一流”まで


 著者  石田朋子
 定価  --
 ページ数  1509ページ
View on Amazon
 
Scroll Up var url = 'https://novella.blog/'; if(window != parent || !(location.href.indexOf(url) === 0)) { top.location.href = url; }