海洋小説『曙光 MORGENROOD』について

海洋小説『曙光 MORGENROOD』について

車、スマートフォン、TV、家電、etc。
私達の便利な暮らしは、様々な金属材料に支えられています。
その元となる鉱物資源が、どこで、どのように採取され、製品に加工されるか、まったく気にかけない人も多いのではないでしょうか。
時に鉱物資源は紛争地域に偏在し、政治的、人道的に深刻な問題を引き起こしているケースもあります。
そんな中、完全自動化された採鉱システムを確立したとしたら?
深海や月面など、これまで考えつかなかったような場所から大量の鉱物資源を採掘できるようになったとしたら?
本作は、ニムロディウムという架空の金属元素を中心に、海底鉱物資源、鉱業、深海調査、海洋情報ネットワーク、建築&デザインなどを通して描く人間ドラマです。

参照記事→ 鉱業問題が手軽に分かる『コルタン狂想曲』と『ブラッド・ダイヤモンド』

全体のあらすじ

宇宙世紀。みなみのうお座に打ち上げられた探査機が一つの鉱石を持ち帰る。
そこから発見された新物質ニムロディウムによって科学技術は著しく発達し、宇宙開発も加速的に進むが、最大のニムロデ鉱山がファルコン・マイニング社の手にわたったことで、ファルコン・グループによる一党支配が始まる。

膠着した社会に風穴を空けるべく、特殊鋼メーカーのカリスマ経営者、アル・マクダエルは、惑星表面積の97%が海洋で覆われたアステリアの水深3000メートルからニムロディウムを含む海底鉱物資源の採掘に挑む。

だが、本採鉱を前にして、プロジェクト・リーダーが失踪。アルは急遽、水中作業のできる潜水艇のパイロットを探し求める。

数ヶ月前に海洋技術センターを解雇されたヴァルター・フォーゲルを紹介されるが、その過程で、彼が密かにGeoCADで描く海洋都市『リング』の鳥瞰図を目にする。

これこそ海洋社会アステリアの未来を変える図と確信したアルは、ヴァルター・フォーゲルに接触を図るが、故郷の再建をかけて闘ったアイデアコンペで、世界的な建築家フランシス・メイヤーと対立したことで意匠の盗用の疑いをかけられていた。故郷を追われ、潜水艇のパイロットの職も失ったヴァルターは、アルに挑戦的な態度を取るが、有り金も尽き、不法滞在すれすれの切羽詰まった状況から、アルの差し出した契約書にサインする。

ヴァルターには、少年時代、大洪水で最愛の父を亡くした悲しい経験があった。志の高い土木技師だった父は、決壊寸前の堤防を守りに行き、高波に呑まれて命を落としたのだ。我先に逃げた役人や技師が生き長らえ、正義の為に闘った父が命を落としたことに納得いかないヴァルターは、フランシス・メイヤーの提示する再建計画に猛然と反発し、緑化堤防のアイデアでもって対抗するが、逆に関係者らの恨みを買い、仕事も信用も失う結果となる。

生き延びる為に、渋々、アル・マクダエルの契約書にサインしたヴァルターは、採鉱プロジェクトの進むアステリアにやって来るが、職人気質のマネージャーは新参のヴァルターを無視し、ヴァルターもまたミッションの内容を知って愕然とする。それは海洋調査とはかけ離れた、水中の機械作業であった。

ヴァルターは憤り、アル・マクダエルにも食ってかかるが、彼の動揺をよそに、本採鉱の準備は淡々と進む。

自信も揺らぎ、苛立ちをつのらせる彼の心を慰めたのは、『フォルトゥナ(運命の女神)の娘』と称されるアルの一人娘、エリザベスだった。

一方、アルは、ヴァルターの身上調査の過程で、偶然、目にした海洋都市『リング』のアイデアこそ、アステリアの未来を変える構想だと確信する。

しかし、 ヴァルターのPCのデータを覗き見した事実を口にすることはできず、アルは娘を介して『リング』の秘密を聞き出そうとするが、二人の絆はだんだん深くなり、娘の恋心はアルの運命まで揺り動かすようになる。

果たして、海底鉱物資源の採掘はファルコン・グループの一党支配に風穴を開け、アステリアの未来を変えるのか。

二人の恋と『リング』の行方は……。

「これが生だったのか。よし、それならもう一度!」のニーチェの『生の哲学』をベースに、親子、恋人、仕事仲間の絆を描く、人間ドラマです。

章立て

宇宙

第1章 運命と意思

海底鉱物資源の採掘に挑むアルは潜水艇パイロットのヴァルターに出会う。彼が密かに描く『リング』の鳥瞰図を目にしてから、新たな運命の輪が回り始める。その絵には、大洪水で命を落とした父の思い出と永劫回帰の願いが込められていた。

洋上プラットフォーム

第2章 採鉱プラットフォーム

水深3000メートルの海底から海台クラストを採取せよ。洋上プラットフォームでは急ピッチで準備が進む。ヴァルターは潜水艇での接続作業に挑むが、古参スタッフと意見が合わず、ミッションにも懐疑的だ。そんな中、アルの美しい一人娘リズに出会う。

海 波 海洋情報ネットワーク

第3章 海洋情報ネットワーク

ファルコン・マイニング社の進出に戦々恐々とする中、ヴァルターは海洋情報ネットワークの構築を提案する。社会の意見をとりまとめる為、ヴァルターとリズは行動を共にするが、距離が近づくにつれ、喧嘩も多くなる。そこに美しいリズの又従妹が現れ、二人の関係に揺さぶりをかける。ネットワークと恋の行方は……。

ウェストフィリア 火山

第4章 ウェストフィリア

マイニング社と開発公団は北方の島ウェストフィリアの資源探査に乗り出す。ヴァルターは深海調査の要請を受けるが、氷に閉ざされた巨大な火山島には、青い貴石をめぐる悲話があった。虚偽の報告を強要され、科学の良心と脅迫の狭間で揺れ動く中、ヴァルターは潜水艇から実況を開始する。

指輪

第5章 指輪

海洋開発の関心が高まる中、アルは有名議員の息子との見合いを画策し、リズは心ならずもMIGの後継者として公の場に立つ。一方、ヴァルターはロイヤル・ボーデン社から示談解消の申し入れを受け、帰郷の念を募らせる。それぞれの想いが交錯する中、二人の愛と『リング』の行方は。

断崖

第6章 断崖

社会の牽引役を失ったアステリアでは、混乱を尻目に、巨大海上都市『パラディオン』の建設に向けて大きく動き出す。ヴァルターとリズはそれぞれの立ち位置から懸命に働きかけるが、強硬な勢力の前に抗う術もない。断崖絶壁に立たされたヴァルターの目に映ったものは…。

無料サンプル・PDF

上下巻の冒頭部を無料サンプルとして配布しています。自由にダウンロードして、内容をご確認下さい。

上巻

アルとヴァルターの出会い、海台クラストの採鉱プラットフォーム、海洋情報ネットワークの構築までを収録しています。

下巻

アステリアに第二の拠点を築くべく、ファルコン・マイニング社が開発公社を立ち上げて、北海の火山島ウェストフィリアに乗り込んでくる。
目当ては純度100パーセントのニムロディウムの結晶を含む青い貴石だ。
ウェストフィリア海域の深海調査を依頼されたヴァルターは、皆の動揺が広がる中、潜水艇から渾身の実況を行うが、意外な結果に繋がっていく..。

タイトル『曙光』の由来

本文にも書いていますが、ニーチェの名著『曙光』の冒頭に記されたリグ・ヴェーダの一文『いまだ光を放たざる いとあまたの曙光あり』がルーツです。
これを海底鉱物資源と人間の可能性に掛け合わせたのが本作です。

ただし、ニーチェの曙光はドイツ語のMorgenröte、本作はオランダ語のMorgenroodです。

■ ニーチェについて

軍国主義的な俗物文化に痛烈な批判を浴びせ、大学の教職を退官したニーチェは、周囲の無理解や孤独にもめげず、旺盛な執筆活動を続けます。しかし1879年、35歳になったニーチェは「我が生涯の中で最も暗い冬」と呼ぶほど最悪の健康状態にみまわれます。やがて静養のため、ジェノアを訪れたニーチェは、シルヴァプラナ湖畔の三角岩のほとりで、後年彼の思想の中核となる「永遠回帰」を閃き、彼の思想を体現する『ツァラトゥストラ』を受胎します。
(ポルト・フィーノ岬の断崖が、ツァラトゥストラ分娩の地といわれています)。

ニーチェの思想を一言で表わすと、「生の肯定」といったところでしょうか。ありのままの自分を認め、受け入れ、どんな暗い運命も克服して生き抜く「意志の英雄」であること――「無」から己の意味を見出し、生を打ち立てていく事こそが「真の創造」だと説いています。(本当はもっと奥が深い。……興味が有れば、入門編あたりから読むことをオススメします。)

著書『曙光』は、ジェノアの明るい陽射しの中で陰鬱なニヒリズムから抜け出し、積極的で建設的な“闘うニヒリスト”に転じた彼の思想の原型とったものです。「いまだ光を放たざる、いとあまたの曙光あり」の一説は、『曙光』の冒頭に記されたもので、インドの詩集『リグ・ヴェーダ』から引用されています。

タイトル一覧

サイトでは本作に登場する技術に関する写真や動画、おすすめの抜粋とコラムを掲載しています。
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Kindle Store

曙光 MORGENROOD 上巻

上巻

海底鉱物資源の採掘を前にプロジェクト・リーダーを失ったアルは、解雇されたばかりの潜水艇のパイロットをスカウトする。彼が密かに制作する『リング』の鳥瞰図を目にした時から、アルとアステリアの運命も大きく変わり始める。『運命と意思』『採鉱プラットフォーム』『海洋情報ネットワーク』を収録。
商品詳細 http://amzn.to/2FA2OxU

曙光 MORGENROOD 下巻

下巻

ヴァルターは開発公社のオファーを受けて深海調査に挑む。一方、アルの後継者として表舞台に立ったリズは幸せな結婚を夢見るが、二人の間に意外な影が忍び寄る。混沌とする中、海洋都市の未来と『リング』の行方は……。『ウェストフィリア』『指輪』『断崖』を収録。
商品詳細 http://amzn.to/2DcWUEv

登場人物

ヴァルター・フォーゲル
13才の時、ゼーラント州一帯を襲った未曾有の大洪水により、家と父親を失い、心的外傷を抱えたまま、母の故国フランスに渡る。心の傷を克服する為、潜水艇のパイロットを目指し、故郷の復興ボランティアにも打ち込むが、情の激しさから破滅的な行動を取り、仕事も信用も一夜で失う。一人暮らしが長く、料理と洗濯が得意。寡黙な性格で、自称『退屈な男』。
アル・マクダエル
MIG(マクダエル・インダストリアル・グループ)を率いるカリスマ経営者。アステリアの産業振興に尽力した理事長でもある。叡知に長け、『拾いの神』と呼ばれる。娘には甘く、なんだかんだで恋愛指南も引き受ける。鉱物に詳しく、あだ名は『タヌキ』。
エリザベス・マクダエル
美人で聡明だが、男性経験ゼロ。アルがファルコン・グループに逆らい、海底鉱物資源の採掘に乗り出した為に常に命を狙われ、体内に『犬の首輪』と呼ばれる発信器を埋め込まれている。夢見がちで、ヴァルターにも『嬢ちゃん』と妹扱いされるが、跡取りの定めを自覚してから政治に目覚める。
ダグラス・アークロイド
採鉱プラットフォームのマネージャー。集鉱機と揚鉱管を繋ぐ接続ミッションでは無人機での遂行を推奨し、パイロットとして呼ばれたヴァルターと衝突する。根は善人で、仲間には慕われる。
フランシス・メイヤー
リゾート施設の設計を得意とする世界的な建築家。故郷の再建をめぐってヴァルターと衝突。因縁はアステリアに持ち越される。政財界に太いパイプを持つ業界きっての実力者。
マックス・ウィングレット
建設会社の施工管理士。人情に厚く、内向きなヴァルターの面倒をよく見る。現実主義で、一同のブレーキ役。黒ビールが大好き。
 
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