誰がアイデアを形にするかで、この世は変わる ~人の意思と品性がアイデアの価値を高める

誰がアイデアを形にするかで、この世は変わる ~人の意思と品性がアイデアの価値を高める

アイデアの可能性 いつかは誰かが必要とするかもしれないから、とことん考えてみるにも書いているように、大友克洋の名作『AKIRA』にも、「人間ってさあ、一生の間にいろんな事をするでしょう。何かを発見したり、造ったり……。家とかオートバイとか橋や街やロケット……そんな知識とかエネルギーって、どこから来るのかしら?』という問いかけがあります。

アイデアは人間の知的活動の産物に違いないけど、では、一体、何がアイデアを生み出すのか――という話ですね。

それは宇宙神の霊感なのか、それとも単なる神経細胞の電気刺激なのか。

スピリチュアルやオカルトを絶対視するわけではないけれど、確かに素晴らしいアイデアは、宇宙の何かと交信して生まれた――みたいに思わずにいない部分があります。

今、私たちが目にしている世界は、人間のアイデアの結晶といっても過言ではありません。

コップ、スマホ、ドレス、高層ビル、といった目に見えるものはもちろん、定額音楽配信、ポイント還元、一時預かり、等々、便利なサービスも、誰かのアイデアです。

時に、人ひとりのアイデアは、世界を滅ぼす力も持ちます。

誰かの思い付きが大勢を破滅させたり、社会を崩壊させることもあります。

景気や天候、技術や世論など、いろんな原因が複合的に絡み合った結果にしても、言い出しっぺの責任は非常に重いです。

このパートは、『パラディオン』という、富裕層向けの巨大な海上都市の建設計画が水面下で進行している事に対し、恋人のリズが、ヴァルターの胸の奥底に秘められた海洋都市のアイデアを引き出そうと促す場面です。彼は自分のアイデアに自信がないので、決して口に出そうとしないからです。そんな彼に、リズは「恐れずに話して」と力付けます。どんな優れたアイデアも、胸の内に持っているだけでは、存在しないも同然だからです。

アイデアを有益な形に昇華させるか、否かは、それを共有する人々の意思と品性によります。

それは技術や資本以前の問題です。

このパートは海洋小説『曙光』の抜粋です。
詳しくは作品概要と記事一覧をご参照下さい。
冒頭部の無料サンプルはGoogle Drive からDLできます。

【抜粋】 誰がアイデアを形にするかで、この世は変わる

※ カフェでリズと夕食を取りながら、海洋都市の未来について語り合う

「人間のアイデアって何なのかしらね。宇宙の塵のように人間の頭の中で生まれ、次第に形を取りながら、未だかつて誰も見たことがないような新しい物をこの世に作り出す。社会や時代を動かしてゆく。時には世界を席巻するような巨大市場を生み、人々の暮らしを根底から変えてしまう。それが社会を豊かにすることもあれば、大勢の人生を台無しにすることある。でも、それらは決して運などではない、人間の意思が形づくるのよ。誰がアイデアを形にするかで、この世は変わるわ。どれほど優れたアイデアも、曲がった意思が働けば歪な世界を作り出すし、アイデア自体は優れなくても、善き意思がそれを優れたものに育てることもある。専門家だから、その道の権威だから、必ずしも優れたアイデアを生み出すとは限らないのよ。私も建築や都市開発について提言できるだけの資格も知識もないけれど、一つだけ確言できる。未来のアステリアに必要なのは、富裕層だけが楽しく暮らすパラディオンではなく、アステリアの人々が安心して暮らせる広々とした都市空間だということ」

<中略>

「もし、あなたがアイデアを持っているなら、恐れずに話して欲しいの。何故って、それが世界を変える鍵になるかもしれないからよ。私なら決して嗤ったりしない。あなたのどんなアイデアでも、活かす道がないか、一緒に真剣に考えるわ。だから、何か思いついたら、恐れたり恥ずかしがったりせず、気軽に教えて欲しいの。アイデアを形にする最初の一歩は、誰かに話してみることだと思うわ」

「君も父さんと同じ事を言うね」

「お父さまと?」

「『たとえ君が世界を変えるアイデアを持っていたとしても、それを口にしなければ誰にも伝わらない。だから勇気をもって話してみよう。お前もいろんな可能性を秘めた海だ』と教えてくれた。もちろん、今もそのつもりだ。だがね、今でさえ海洋情報ネットワークに四苦八苦してる。それを差し置いて、また新たな何かを口にするのは大風呂敷みたいで気が進まない。もう少しこの地への愛着が湧いたら、その覚悟も芽生えるかもしれない。その時には君に一番に話すよ。どんな事も、君に一番に」

【リファレンス】 アイデアは資本に優先する

アイデアは資本に優先する 映画『ソーシャル・ネットワーク』201にも書いていますが、『アイデアは資本に優先する』は本田宗一郎の言葉です。文字通り、資金も知名度も乏しい中、アイデア一つで業界の頂点に上り詰めた一例ですね。

ところで、このFacebook、個人が発信力を持ち、影響力が数値で可視化される時代に、非常にマッチしたサービスだったと思います。「だった」と過去形なのは、アイデアが具現化された時点では一つ頭抜いていたから。今はネットの繋がりにも新たな価値観が求められています。

しかし、人間の価値が数値で可視化されるサービスは、過剰な自意識や劣等感を生みだし、メリットよりもデメリットの方が目に付くようになりました。

当初は画期的なサービスも、運営する側のセンスによって、あらぬ方向に転落していく典型だと思います。

「いいね」も「フォロワー数」も、運営側にしてみたら、「手軽に応援できるツール」に過ぎなかったのかもしれませんが、数値が人間の印象や力関係にもたらす影響を軽く見積もっていたかもしれませんね。本来、フラットであるべき世界――多くのユーザーがそれを夢見ていた仮面の息抜き空間に、数値というヒエラルキーを持ちこんだ結果、ユーザーに飽きられ、失望されたのは、当然至極といえましょう。そして、それは、今後いろんな分野で加速するような気もします。

もしかしたら、人々を孤独から救い、豊かな繋がりをもたらしたかもしれないアイデアが、それに携わる人間(ユーザーも含む)の意識によって歪められていくのも皮肉ですが、どんな優れたアイデアや設計も、人間が関わる限り、そこには人間くさい欠点が伴うのかもしれません。

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上巻の冒頭部を収録した無料版PDFはGoogle Driveにあります。
閲覧は無料です。モバイルでも表示可能。
『曙光』上巻 ~”海底鉱物資源を採掘せよ”から”屁理屈だけは超一流”まで


 著者  石田朋子
 定価  --
 ページ数  1509ページ
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