『マッドマックス 怒りのデスロード』(原題:MAD MAX ~fury load)は何回見ても面白いですよね。
世の中には「オリジナル・原理主義者」が相当数存在して、私もその一人ですが(例:シンデレラの続編やリメイクは許せない)、今度の新作は文句ナシに楽しめました。
人によっては「筋書きも何もない、どこが面白いん?」と感じるようですが、私は次の二点に新しさとメッセージ性を感じました。
Witness Me
My name is MAX
Witness Me
山海塾のウォーボーイ達は、自らの死に際して「Witness Me」と叫びます。
邦訳では「オレを記憶しろ」「見届けろ」という感じになってるようですが。
「ウィットネス」というと、リチャード・ギアが弁護士で登場するような法廷ドラマによく出てくる。
映画においては、『証人』という意味でよく使われます。
ちなみにアルクの説明はこんな感じ。
http://eow.alc.co.jp/search?q=witness
【自動】
証言する、証明する
【他動】
~を証言[証明・目撃]する、目の当たりにする[見る]、~に立ち会う、署名する
~を経験する、~に直面する、遭う、見舞われる◆この意味ではexperienceに近い。
〔年代が〕~を示す[の年である]文例
【名】
目撃者、証人、参考人、立会人文例
証拠、証言
核戦争か何かで荒廃した大地に生きるウォーボーイ達は、遺伝的に短命で病気がち。完全な肉体に恵まれず、その死期も見えている。
その恐怖と虚しさを逆手に取って、彼らにとって『価値ある死』を洗脳しているのが頭領のイモータン・ジョー。
戦いで散ったウォーボーイはヴァルハラに招かれ(ここだけゲルマン神話)、永遠の栄光に輝く・・というわけです。
荒廃した社会に美も善も仁篤もなく、あるのは暴力と支配のみ。
彼らにとっては、『価値ある死』に旅立つ一瞬だけが、人生の悦びを与えてくれるのかもしれません。
そんな我が死をWitnessしろ!
「見守って」でも「忘れないで」でもない、この命の証人となれ! というニュアンスがね。
ウォーボーイの儚い人生や願いを感じさせるわけですよ。
彼らにとって、その瞬間を戦い、輝き、勇ましく死んで行くことは、きっと大変名誉なことなのでしょう。
その死を証人として見届けることは、その人がこの世に存在し、勇ましく戦い、たとえ数年の短い命であっても精一杯生きた事を胸に刻むことでもある。
それはまたお互いにとって友情の証であり、生の実感であり、分かち合いなのだと思います。
私も「Witness Me」という台詞を耳にした時、ああ、こういう使い方もあるのか、と勉強になりました。
それまでウィットネスと言えば、堅苦しい法廷ドラマのイメージしかありませんでしたけど、「生きて、生きて、勇ましく散って行く。それを見届けてくれ!」という願いの言葉なんだな、と。
多分、これまでのハリウッド映画で「Witness」をこういう使い方した作品って、無かったんじゃないでしょうか。(決め台詞として)
そう考えると、ウォーボーイって、儚くも可愛いい存在ですよね。
私も臨終の際には「Witness Me」と叫びたくなりました。
ちなみに、Shiny & Chrome のクロムは非常に毒性の強い金属ですが(六価クロム)、鋼玉(コランダム)に微量に含まれることでルビーやエメラルドの美しい色合いを醸し出す、魔法のエッセンスでもあります。
My name is MAX
本作に登場するマックスは、家族も友人もない、流れ者として描かれています。
ゆえに、荒涼とした砂漠では「何もの」でもない。
必死で脱出を試みる女性たちにとっても、何ものでもない立ち位置を貫こうとする。
心の中まで渇ききって、人助けだの、同情だの、「オレの知ったことじゃねぇ」という感じですね。
ゆえに、マックスは名乗らない。
関係性を持ちたくないから。
「名前」というのは、この社会において自己が自己である為の重要なファクターです。
どんな境遇、どんな立場の人間も、必ず「名前」を持っている。
それはアイデンティティの証であると同時に、社会的存在とする手立てでもあります。
それを名乗らないということは、社会との断絶であり、自己否定であり、過去の忘却でもある。
そして、それほどにマックスはこの社会に(あるいは人間に対して)冷め切って、期待もせず、望みもせず、ただ喰らうだけの存在に成り下がっていた・・という現れでもあるでしょう。
そんなマックスに度々呼びかける「謎の子供」。あれは暴走族に轢き殺された自身の子供ですよね。
見捨てるな。一緒に行こう。
孤立を決め込んだマックスに幾度となく「本来の心」を呼び覚まそうとする。
最後の最後にフュリオサに「My name is MAX」と名乗ることは、その心が蘇った、という証でしょう。
最終的にマックスは再び孤独な旅路に戻り、フュリオサとも別れて行くけれど、フュリオサの中で彼は「マックス」という一人の人間であり、そこには関係が存在する。遠く、離れ離れになっても、共に戦った絆はずっと心に残るでしょう。
My name is MAX はありふれた言い回しだけども、確かな友情と励ましがいっぱいに詰まった言葉なのです。
*
……と考えると、なかなか感動的な作品でしょう。
次に鑑賞する時は、ぜひこのあたりに注目してご覧下さい(#^.^#)
マッドマックスのここが好き
全ての元凶、イモータン・ジョー(不死身のジョー)ですな。
こんなんに上に乗られたら、妻でなくても逃げ出します。後背位でもお断り。
まるで神殿のようなシタデル。この美術がいいですよね。
お家の一大事にも無心でドラムを叩き続ける和太鼓集団「やまと」の皆さん(うそうそ・・)
高校時代に打楽器やってた経験から言うのですが、四人揃って、同じフォームで、一糸乱れずドラムを叩くのって、非常に難しいですよ。
適当にドンドコ叩いているように見えますけど、相当練習してると思うよー。背格好も四人同時に似せないといけないしね。
これって、もろにアレじゃん。。愛用車はTOYOTA?
マッドマックスは、このキャラを作った時点で成功でしょう。
この炎のギタリストがなかったら、魅力も半減してると思います。
私も心を鼓舞するのに欲しいですよ。
ぜひ仕事中にバックで演奏していただきたい。
これはレクター博士へのオマージュかっ?
主演=メル・ギブソンにならなかったのは、「こんなマスク、着けるのはイヤ」で決裂したからでしょう。
その点、トム・ハーディは何とでもいじれる。
ある意味、メル・ギブソンを主役に据えなくて正解です。
Witness Me ! 我が死を見届け、心に刻め!
なんじゃ、この銀色のスプレーは・・と思ったけど、これも新感覚ですよ。
勇ましく死んだ戦士には敬意を払う。なぜここだけ仏教徒みたいな仕草なのか・・
このスタントも大好き。
自分がスタントマンで、これほど綺麗なショットが残せたら満足。
美しすぎる五人のブリーダー妻。将軍さまもビックリ。
成功のポイントは、五人の女性キャラの描き分けにあると思います(五大陸の代表という感じ)。
それぞれ人種も性格も異なり、臆病な娘もいれば、リーダー格の女性もいる。
一人一人がキャラとして自立して、均等に描かれている点がポイントでしょう。
後部座席で震えているだけでなく、いざとなれば戦いもする勇敢さも魅力的。
それだけにスプレンディドが亡くなったのは本当に残念です。
このスタントも簡単そうに見えて、すごい難しいですよ。
私も原付で通勤していた時、かなり傾斜のある坂を往復してましたが、上るより降りる方が神経使うんですよね。どうしても加速するので。
全アクションの中では、峡谷のバイク野郎のスタントが一番好きです。
マックスは「かわいいコックさん」に似ている。
唇のむちゅっとした感じが可愛いんだよね。
作中に登場する車で、どれでも好きなのあげますよ・・と言われたら、迷わずこの一台を選びます。
これだけ馬力があれば、車庫入れもラクラク(関係ないけど)
この車、めっちゃ好きです☆
五人の中で最もアクティブな子。可愛いですよね。
顔は可愛いのに、けっこう口が悪い彼女。ジジイと言うたり、バカと言うたり・・(私みたい)
この彼女、なんとなくドリュー・バルモアに似てません?
この演出、すごく好き。
イモータン・ジョーの銃の前に妊娠したお腹を晒す。
この駆け引きは女性にしか分からんだろうね。
「絶対に殺せない」と計算した上での行動です。
まさに夫婦喧嘩。
死んだ我が子のために子守歌を歌うジョー。
こういうお茶目な造形も作品の魅力ですよね。
何回見ても、可愛い♥
劇場公開された後、みな、真っ先に、このギタリストが誰か、検索したようです。
レジスタンスばばの中では、この二人が一番私に似ている。
「一人、一発ずつな♪」
嬉々として銃をぶっ放すところが、たまらん♪
このスタントとBGMが最高です。
このショットも大好き。
たとえ端役でも、こんなワンシーンを残せたら、最高に満足です。
吹き替えは千葉ちゃんにやって欲しかった。
あの声で「ヴァルハラ~~」って叫んで欲しかったでス☆
次々に車やトラックが爆発する場面。
演出としては非常にオーソドックスで、歌舞伎のケレンのようだが、あまりの美しさにいつも見入ってしまう。
これ、何回ぐらいテイクしたのだろう。
車はやっぱミッションですよ、ミッション!
オートマに乗ってるヤツの気がしれん。
TOYOTAもこういうのインストールしてくれたら、私もアンチトヨタに終止符を打つのに。
出しましょう、マッドマックス・バージョン。
ギタリストの彼だけは苛めないで欲しかった。もう可哀想で、可哀想で・・
この彼と彼女は1回ぐらいやってそうな気がするのだが、私が深読みしすぎか。
ジョー「褒美を取らせる。どれでも好きなのを選べ」
リクタス「えっ、まじですか」
みたいな。
この彼女も可愛いですよね。
最後の最後に勇気を振り絞って、フュリオサの手助けをするあたりが。
そして、Witness Me。「僕の生き様を見届けて」
激しい戦いの中でほのかに芽生えた友情。
行く手を塞がれたウォーボーイに、どのみち助かる道はなく、同じ死ぬなら彼女に見守られて勇ましく散りたい。
どうぞ、永遠に僕を記憶して。
そして、幸せに。
この場面、けっこう泣けるのよ。。。
ラストのワンシーンはCGで、くさい演出といえばそうなんだけど、遊び心満載ですよね。
V8ホイールを売りに出せば、けっこう売れるんじゃないか。
私も買い換えたいわ。
「自動運転」とか眠たいこと言わずにさ。
もっと遊び心のある車を出して欲しいよね。
最低限の「走る機能」しかなくて、デザインもドロ臭いけど、エンジンの食いつきの良さは世界一みたいなね。
ハンディがあっても輝ける
※劇場鑑賞後の感想です
作品は期待以上に面白かったです。私も基本的に「北斗の拳」の世界観が好きですからね。
のっけから、山海塾。
乳搾り女。(でも、授乳中の盛んな時はあれぐらい出ますよ。私も湯船につかっただけで母乳が1メートル以上飛びましたから)
あの火を噴くギター野郎も最高。どうせならドラムは和太鼓にして欲しかった。。
どうせまたリバイバルブームに乗っかった「ネタ切れ・金稼ぎ」系統かと思ってたけど、あそこまで徹底してアクションにこだわれば、むしろすっきり楽しめるし、クリーチャーにも遊び心があって寺沢武一テイストでした。
一言で言えば、「マッドマックス」の世界を借りた「完全な新作」ですね。
まったく新しい作品として設定しても成功したんじゃないでしょうか。
昨今のリバイバルブームの中では「ジュラシック・ワールド」より上出来に感じましたよ。ジュラシック・ワールドは、なんとなく陳腐な怪獣映画で終わったような印象でしたが。
案外、メル・ギブソンでないからこそ、アクションが生きたのかもしれません。
メルが主演をすると、どうしても「メル・ギブソン」の映画になり、その格好良さに重点が置かれるでしょう。
でも、トム・ハーディの場合、そこまでカリスマ性がないから制作者もやりたい放題できるし、観客の視線もそこに釘付けにならない。
一点集中のヒーロー色を排することで、アクション全体を見せることに成功したような気がします。
*
特に良かったのが、途中で登場したレジスタンスばばぁ軍団。
皆さんも、まさかバイクに乗ってるのが「ばばぁ」とは思わなかったでしょ(^^;)
私もあれは爽快でしたわ。
老女でもマシンガンぶっぱなして闘えるんやなー、と、今後の参考になりました。
これからの時代、ばばぁもあれぐらいパワフルでないと生き残れないね。
私もあのノリで更年期障害以降をエンジョイしたいと思っています。
DVDも欲しいけど、日本語吹き替えが最悪っぽいので、こっちはカスタマーレビューをチェックしてから。
映画音楽も最高でした。多分、これが一番ポイント高いかもしれません。
今回も寺沢武一テイストの異形キャラが随所に登場しましたね。(ちょっと大友克彦も入ってるような感じ)
これは映画とは全然関係ないエピソードだけども。
今でも強く心に残っているのが、初めてアメリカのディズニーワールドを訪れた時、重度の吃音の男性がお土産ショップで楽しそうにお仕事されていた事です。
日本人の私が聞いても気の毒なほどの吃音で、きっと子供の頃から相当イジメられて、劣等感に苦しんだはずですよ。
でも、お土産ショップのレジに堂々と立って、明るく接客されていた。
お客さんも楽しそうに会話されてたし、まったく引けをとる部分がありませんでした。
ご本人の心延えもさることながら、これほどの吃音を持つ人を世界的観光地のお土産ショップの売り子として雇う方も懐が深いと思いません?
普通は嫌がるでしょう。本人がやりたいと望んでも、「い、い、いらっしゃい、、どどど、どれにしましょか」みたいな喋り方の人に接客されたら困ると、排除する方が圧倒多数だと思います。
その点については、アメリカ社会って寛容だなと思いました。
それはディズニーワールドに限らず、映画やドラマも同じ。
時々、小人症の方や、手足の不自由な方、少し奇形があるのかな・・という方でも、堂々と映画に出演されますよね。
SFの異星人だったり、日頃めったに人前に姿を現さないが非常な賢人で主人公に知恵を授ける車椅子の老人とか、メイクや特撮ではできない「形」を、その方々の肉体を使って表現している。
子供番組でも、車椅子に乗った方が郵便局員や雑貨屋の店員として普通に登場されますし(演技ではない)、
それは決して「見世物」じゃない。(制作者も蔑むような描き方は絶対にしない)
小人症の方には小人症の、手足の不自由な方には手足が不自由ななりの役割があり、メリットがあり、それぞれがそれぞれの特徴を活かして、映画の重要なパートを演じている。何も恥じることはないし、この世にはその人にしか出来ない役がきっとある。
そういうのを間接的に語っているような気がします。
たとえば、1990年のアーノルド・シュワルツネッガー主演『トータル・リコール』でも小人症の女性が火星のレジスタンスとして登場します。
火星では独裁者が作った粗悪なシェルターの為に放射能汚染が蔓延し、ミュータントがたくさん生まれている、という設定です。
悪者の軍隊がバーに乱入した時、カウンターに飛び乗ってマシンガンをぶっ放すシーンが非常に格好よかった。
女性とは思えないほど鍛えられた筋肉を見る限り、多分、映画女優を職業として、日頃からお手入れされてるのだと思います。
それでも映画の主人公は美女かハンサムだし、何年、女優として身体を張っても、アンジェリーナ・ジョリーやジュリア・ロバーツがやるような役は多分一生回ってこないでしょう。
それでも、ハリウッドには彼女にしか演じられない役があり、またハリウッドもいろんなハンディを背負った人に門戸を開いて、輝くような活躍をさせてくれる。
デブであろうが、シコメであろうが、それも「かけがえのないキャラクター」として受け入れ、本人も自分の容姿のデメリットを自覚しながらも、あえてそれで勝負する(劣等感に苦しむ人は世界中の人が観る映画なんて出演できないですから)、そうした土壌がハリウッド映画のいい所だと私は思っています。それに難癖つけて批判する人もないですしね。
*
余談ですが・・
キャシー・ベイツが「ミザリー」でアカデミー主演女優賞を取った時、ある映画評論家が「キャシー・ベイツのような女優(巨漢の強面)が活躍する場が、日本の映画や演劇界にはない」と仰ってたけど、そこで負けてるんじゃないかな、と思ったりします。
サウンドトラックのCD紹介
この抱き合わせ販売、なんとかならんのでしょうかね。資源のムダ、お金のムダ。もったいない。
マッドマックス 怒りのデス・ロード [Blu-ray] (Blu-ray)
Actors: トム・ハーディー, シャーリーズ・セロン, ニコラス・ホルト, ヒュー・キース=バーン, ロージー・ハンティントン=ホワイトリー
Director: ジョージ・ミラー
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Studio: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
Running Time: 120 minutes
List Price: ¥ 2,571
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マッドマックスはサントラ盤が素晴らしいです。ドライブのお供に最高。特に高速では我を忘れるよ。