海岸

知見は時に絶望しかもたらさない フランツ・カフカの『ロビンソン・クルーソー』

幸せに生きるコツ――なりふり構わず

ロビンソン・クルーソーが島のもっとも高い一点、より正確には、もっとも見晴らしのきく一点にとどまりつづけていたとしたら――

慰めから、恐怖から、無知から、憧れから、その理由はともかくも――そのとき彼はいち早く、くたばっていただろう。

ロビンソン・クルーソーは沖合を通りかかるかもしれない船や、性能の悪い望遠鏡のことは考えず、島の調査にとりかかり、またそれをたのしんだ。

そのため、いのちを永らえたし、理性的に当然の結果として、その身を発見されたのである。

カフカ寓話集 (岩波文庫)

今の時代、「知っていること」「備えがあること」は、現代人の幸せ術として必須のものだけど、知っているがゆえ、備えがあるが為に、かえって身がすくむこともあると思う。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの言葉にもあるように、人間、時には、何も考えずに思い切ったことをする勇気と勢いも肝心。

いつでも最上の場所が、最高の結果をもたらすとは限らない。

見えすぎることや知りすぎることは、時に身を滅ぼすという意味で、人間、真ん中あたりを、無我夢中で這い上がっている時が、一番安定しているんじゃないか。

絶望もせず、転げ落ちることもなく、ひたすら上っていく、あの時が。

こうした言葉を絶望名人カフカが記しているのも興味深い。

 カフカ寓話集 (岩波文庫) (文庫)
 著者  カフカ
 定価  ¥ 778
 中古 41点 & 新品  ¥ 14 から
 5つ星のうち 4.7 (12 件のカスタマーレビュー)

ギャラリー

フランツ・カフカ博物館 正面入り口フランツ・カフカ博物館 正面入り口カフカ博物館前の裸の男のオブジェカフカ 頭部のオブジェ
広告
>海洋小説『曙光』MORGENROOD

海洋小説『曙光』MORGENROOD

ニムロディウムという架空の金属元素を中心に、鉱業、海底鉱物資源、深海調査、海洋情報ネットワーク、建築&デザインなどをテーマに描く人間ドラマ。水深3000メートルに眠るニムロディウムの採掘は世界を変えるのか。生の哲学を中心に海洋社会に生きる人々の願いと攻防を描きます。Google Driveにて無料サンプルPDFも配布中。

CTR IMG