知見は時に絶望しかもたらさない フランツ・カフカの『ロビンソン・クルーソー』

幸せに生きるコツ――なりふり構わず

ロビンソン・クルーソーが島のもっとも高い一点、より正確には、もっとも見晴らしのきく一点にとどまりつづけていたとしたら――

慰めから、恐怖から、無知から、憧れから、その理由はともかくも――そのとき彼はいち早く、くたばっていただろう。

ロビンソン・クルーソーは沖合を通りかかるかもしれない船や、性能の悪い望遠鏡のことは考えず、島の調査にとりかかり、またそれをたのしんだ。

そのため、いのちを永らえたし、理性的に当然の結果として、その身を発見されたのである。

カフカ寓話集 (岩波文庫)

今の時代、「知っていること」「備えがあること」は、現代人の幸せ術として必須のものだけど、知っているがゆえ、備えがあるが為に、かえって身がすくむこともあると思う。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれの言葉にもあるように、人間、時には、何も考えずに思い切ったことをする勇気と勢いも肝心。

いつでも最上の場所が、最高の結果をもたらすとは限らない。

見えすぎることや知りすぎることは、時に身を滅ぼすという意味で、人間、真ん中あたりを、無我夢中で這い上がっている時が、一番安定しているんじゃないか。

絶望もせず、転げ落ちることもなく、ひたすら上っていく、あの時が。

こうした言葉を絶望名人カフカが記しているのも興味深い。

 カフカ寓話集 (岩波文庫) (文庫)
 著者  カフカ
 定価  ¥ 778
 中古 40点 & 新品  ¥ 8 から
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QUOTE CARD

  • どんな高邁な理想も、言葉だけでは人は動かせない。 身をもって示して初めて、理想が理想としての意味をもつ。 その後、彼は死ぬまで父を忘れず、その生き様を指針にするわけだが、愛とは何かと問われたら、慈しむだけが全てではない。身をもって生き様を示す勇気も至上のものだろう。 誰でも犠牲は怖い。  自分だけ馬鹿正直をして、損したくない気持ちは皆同じだ。  だが、その結果、一番側で見ている子供はどうなるか、いわずもがなだろう。  言行の伴わない親を持つほど不幸なことはない。  たとえ現世で馬鹿正直と言われても、本物の勇気、本物の優しさ、本物の気高さを間近に見ることができた子供は幸いである。 どんな高邁な理想も、言葉だけでは人は動かせない。 身をもって示して初めて、理想が理想としての意味をもつ。...
  • 「創造的」というのは詩を書いたり、絵を描いたり、という意味ではありません。無の平原から意味のある何かを立ち上げることです。 より良く生きる為に、日々、考えること、実行すること、その全てが『創造』です。 どんなに小さくても、昨日よりは今日、今日よりは明日、少しずつでも歩みを進め、善きものを積み上げることを「創造的な生き方」と言います。 「創造的」というのは詩を書いたり、絵を描いたり、という意味ではありません。無の平原から意味のある何かを立ち上げることです。 より良く生きる為に、日々、考えること、実行すること、その全てが『創造』です。...
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この記事を書いた人

石田 朋子

文芸愛好家&サブカルチャー・ファン。主に70年代~90年代の作品に思い入れがあります。寺山修司の名言『詩を作るより、田を作れ(揶揄)』をモットーに、好きな作品を次代に伝えることを目標にしています。海外在住につき、現代日本とは相容れない所がありますがご容赦ください。
※ 現在、制作巣ごもり中につき、ほとんど更新していません。