詩心がなければ世界は灰色 『葬式に行くカタツムリの唄』ジャック・プレヴェール

詩心がなければ世界は灰色 『葬式に行くカタツムリの唄』ジャック・プレヴェール

死んだ葉っぱの葬式に
二匹のカタツムリが出かける
黒い殻をかぶり
角には喪章を巻いて
くらがりのなかへ出かける
とてもきれいな秋の夕方
けれども残念 着いたときは
もう春だ
死んでいった葉っぱは
みんなよみがえる
二匹のカタツムリは
ひどくがっかり
でもそのときおひさまが
カタツムリたちに話しかける
どうぞ どうぞ
おすわりなさい
よろしかったら
ビールをお飲みなさい
お気が向いたら
パリ行きの観光バスにお乗りなさい
出発は今夜です
ほうぼう見物できますよ
でもわるいことは言わないから
喪服だけはお脱ぎなさい
喪服は白目を黒ずませるし
故人の思い出を
汚します
それは悲しいこと 美しくないこと
色ものに着替えなさい
いのちの色に
するとあらゆるけだものたちが
樹木たちが 植物たちが
いっせいに歌い出す
声を限りに歌い出す
ほんものの生きてる唄を
夏の唄を
そしてみんなはお酒を飲み
そしてみんなは乾杯し
とてもきれいな夕方になる
きれいな夏の夕方
やがて二匹のカタツムリは
自分の家へ帰って行く
たいそう感激し
たいそう幸福な気持ちで帰る
お酒をたくさん飲んだから
足はちょっぴりふらつくが
空の高い所では
お月さまが見守っている。

(原題) Chanson des escargots gui vont â l’enterrement

プレヴェール詩集 (岩波文庫)

時の支配者たちは言う

ペンを捨てて、田を耕せ、と。

花を愛で、星を眺める者など、この世の何の役にも立たない。

土手に座って、詩を作る閑があるなら、

世のため、人のため、しっかり田を耕せ。

一番たくさん収穫した者が、一番偉くて、一番たくさん食べる権利がある。

生きたければ、黙って田を耕せ。

そして、たくさん収穫しろ。

それだけが、唯一、お前を自由にする。

耕せ、耕せ、世田谷、耕せ。

腹一杯食べて、幸せになりたいならば、

休む暇なく、ひたすら耕せ。

雨の日も、

風の日も、

手が荒れようと、

心が荒もうと、

耕せ、耕せ。

それだけが唯一、お前を幸せにする。

そして、世界はどうなった?

人は本当に幸せになっただろうか。

いつか田を耕すのに疲れた時

その脇をのんびり歩く かたつむりの夫婦に

心を癒やされる日が来る

一篇の詩

美しい調べに

命を救われる日が

人が詩人に出会うのは

いつでも世界の終わりなのです

 プレヴェール詩集 (岩波文庫) (文庫)
 著者  ジャック・プレヴェール
 定価  ¥ 907
 中古 16点 & 新品  ¥ 643 から
 5つ星のうち 5.0 (2 件のカスタマーレビュー)

この詩は、寺山修司の「少女詩集」、谷川俊太郎の「世界が私を愛してくれるので」と並んで一番好きな作品です。

 
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