「人と話すって、いいね」 悩みは話す(離す)ことで道が開かれる

秋葉原で通り魔による連続殺傷事件が発生した時、ワイドショーにかじりついていた人なら聞き覚えがあるでしょう。

人と話すって、いいね

教育ママの期待を一身に背負い、エリート校に進学したものの落ちこぼれ、あちこちの職場を派遣社員として転々とするうちに鬱屈し、ついにはケータイ掲示板の書き込みにキレて、何の罪もない通行人を七名も死亡させた凶悪殺人犯。

自尊心の歪みと生活への不安から、人との交流も絶ち、ずっと閉じこもっていた犯人が、凶器となるナイフを買い求めに行った時、女性店員とにこやかに雑談した時の印象を語った言葉がコレだ。

「人と話すって、いいね」

この一言が、人間の心の本質を表しているように思う。

どんなにヒネくれても、憎しみに凝り固まっても、「愛が欲しい」。

人との触れ合いだけが、唯一、心を蘇らせるということを。

カウンセリング講座などでよく教わることだけど、「話すこと」は「離すこと」。

誰かに話すことによって、怒りを離す、こだわりを離す、不満を離す──。

離せば、軽くなる。

怒りや絶望でガチガチに固まっていた心に余裕が生まれる。

ところがね。

閉じこもっている人は、離したいと望みながらも、離すのが怖いんだ。

第一に、離す先がない。

誰かに見せれば嫌われる。

軽蔑されて、傷つけられる。

他人を信用していない。

自分自身のことも「サイテー」だと思っている。

じゃあ、匿名で語れるネットの掲示板に書き込みでもしてみるか。

名無しさんとのやり取りで、一時は、ウサも晴れるかもしれない。

でも、根本的な解決にはならない。

所詮、どこの誰かも分からない他人。

あなたが相手に顔も名前も証さないように、相手だってあなたに全ては示さない。

言葉だけが表面を空回り、いつか空しく感じるようになるだろう。

一番の特効薬は、人と話すことだ。

人の温もり、生きた会話、言葉では伝えきれないものが、人との語らいの中にある。

おそらく、それが出来ない人は、本当の自分を見せることも、知られることも、恐れているのだろう。

だから、内にこもる。そして、ますます、苦しみが深くなる。

でも、相手を間違えなければ、一瞬の会話がすべてを解き放つ。

「ああ、こんなことで苦しんでいたのか」と、それこそ大笑いしたいような気分になるだろう。

通り魔の男も、店員と話している時の顔は、悦びに輝いていた。

きっと、嬉しくて、嬉しくて、今までの恨み辛みも忘れてしまうほど、温かい瞬間だったろう。

そして、その時、自分が本当に求めているものに気付けば、もっと違った道が開けていたかもしれない。

でも、そうはならなかった。

これ以上自分が壊れてしまうのが怖いから。

誰を信じていいのか、分からないから。

そうして、自分の内にこもってしまう人たち。

「つらい、苦しい」と言いながら、解決よりも、今の自分を守る方を選んでしまう人たち。

勇気を出そうよ。

相手を間違えなければ、必ず道は開かれる。

Morgenrood 曙光

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この記事を書いた人

石田 朋子

文芸愛好家&サブカルチャー・ファン。主に70年代~90年代の作品に思い入れがあります。寺山修司の名言『詩を作るより、田を作れ(揶揄)』をモットーに、好きな作品を次代に伝えることを目標にしています。海外在住につき、現代日本とは相容れない所がありますがご容赦ください。趣味はドライブと登山。