Fragile スティング

スティングの『Fragile』 世に悲しみの種はつきまじ

もし、この世に、スティングとレオナルド・ディカプリオ(=ハリウッド映画)がなかったら、私は英語を話すこともなかったし、夫と結婚することもなかったであらう・・と思う。

20代前半、カーステレオから流れるスティングの『シスター・ムーン』を初めて耳にしてからというもの、寝ても覚めても、スティング一色。
そう言えば、「孤独のメッセージ」も「シンクロニシティ」も「『Every little things she dose is Magic』も本当にいい曲だったなとPOLICEの時代にまで遡ること数年。

暇さえあればCDを聴き、歌詞カードを眺め、ステレオの中のスティングと一緒に歌ったものだった。

それこそ、いつか、夢のように、世界のどこかで出会うかもしれない……それはきっと飛行機の中……、その時、私は、どんな言葉で好きな気持ちを伝えればいいのだろう、と、脳内シュミレーションの英会話を繰り返すこと限りなく。

時は過ぎ、『シスタームーン』も『Magic』もすっかり空で歌えるようになった頃、飛行機の中で出会ったのは、スティングでも、レオナルド・ディカプリオでもなく、今の夫という四コマ漫画のようなオチで、私の夢はついに叶わなかったのだけれど(叶うわけないんだけど)、あの時期にスティングに出会えたのは本当に幸せだった。

Be yourself no matter what they say(彼らが何と言おうと、君自身でいることだ)』というスピリットを教えてくれたから。

そんなスティングの数あるヒット曲の中でも、とびきり好きだったのが、『Fragile』。

自他ともに認めるほどゴーマンで、エゴイストで、「自分大好き」なスティングが、これほど深い愛を込めて人の世の哀しさを歌うのも不思議な話と思った。

「あなたの愛は、本当はどこにあるの?」と聞きたくなるくらいに。

CD制作に寄せたコメントで、スティングはこんな言葉を残している。

現在の状況の下では「民主的自由のためにたたかう人」とドラッグに手を染めたノンポリのゴロツキ、また、平和部隊のボランティアとマルクス革命論者との見分けが、ますますつきにくくなっている。
アメリカ人エンジニア、ベン・リンダーは、このため誤解されて、1987年、コントラに殺された。

ベン・リンダー氏は、ニカラグアの貧しい人々に、水や電力を供給することを目的に、水力発電ダムの工事に携わっていた若いエンジニアだった。
にもかかわらず、反政府勢力に標的にされ、手榴弾を投げつけられて殺害されたのだ。

スティングの作風はいつも遠回し。歌詞にも、メロディにも、プロパガンダ的なものは表れない。

でも、分かる人には分かる。

そういうメッセージ性に富んでいる。

ちなみに、チリの恐怖政治で愛する人を亡くした女たちの孤独なダンスを謳った「They dance alone」は、チリ国内で演奏することも聞くことも禁じられていたそうだ。

私は、スティングやポリスのミュージックビデオも全部持っていて、暇さえあればTVの前でランデブーしていたのだが、Fragileのビデオは特に好きだった。

こんなお方が目の前にいたら、たとえ世界中の政府やテロリストを敵に回しても付いていくだろうな、なーんて。


世の中を見渡せば、悲しいこと、不条理なこと、いっぱいあって、神は人間にいったい何を期待しているのかと問いかけたくなることも多い。

生きることは価値あること──それは恵まれた人間だけに許される考え方であって、極限の不幸や暴力においては、夢とか正義とか優しさとか、そんなものは何の役に立たないのかも知れない。

にもかかわらず、人間らしく生きようとする人がある。

地獄のような所にも愛はあって、この世も捨てたものではないことを教えてくれる。

この世に見切りをつけるのは簡単だが、人間というのはそこで終わるものじゃないんだな。

*

世に悲しみの種は尽きず、こうしている瞬間にも、誰かが殺され、誰かがうちひしがれる。

スティングの謳う「Fragile=もろさ」とは、命の儚さももちろんあるけれど、あっけなく憎悪や暴力に走ってしまう人間の愚かさをたとえたものではなかろうか。

How fragile we are.

の「How」が、スティングの溜め息に聞こえて仕方なかった。

そして、それは、飛行機事故で亡くなった大統領とその一行を悼み、国中で喪に服しているポーランドのカーステレオ(この一週間は、騒々しいラップやポップスは控え、一日中バラードを流している)から流れた時、何とも言えないこの世の非情さと、ただただ降り注ぐばかりの涙の雨を感じずにいなかったのである。

CDライナーノーツより

CDのライナーノーツを手掛けるのは、赤岩和美氏と中川五郎氏(日本語訳・担当)

『Fragile』について、スティングはこんなコメントをしている。

In the current climate it’s becoming increasingly difficult to distinguish “Democratic Freedom Flihters” from drug dealing apolitical gangsters or Peace Corp workers from Marxist revolutionaries. Ben Linder, an American engineer was killed in 1987 by the “Contras” as a result of this confusion.

現在のような状況の下では「民主的自由のためにたたかう人」とドラッグに手を染めたノンポリのゴロツキ、また、平和部隊のボランティアとマルクス革命論者との見分けが、ますますつきにくくなっている。アメリカ人エンジニア、ベン・リンダーは、このため誤解されて、1987年、コントラに殺された。

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フラジャイル スティング

フラジャイル スティング

フラジャイル・ア・ラ・カルト

私も高齢の部類に属するから、年を重ねた人のことを悪く言うようなことはしたくないんだけども、やっぱ、どんな優れたシンガーも、加齢と共に喉が詰まって、高音が出にくくなるんだよね。これは2010年の録音だから、スティング=59歳。(1951年生まれ)
だから、どうしてもピッチを落として歌わざるをえないのだけど、それをカヴァーするようにメロディをアレンジしているのが印象的。
このアレンジが即興かどうかは分からないけども。

こちらは、2016年、パリの連続テロ事件で多くの犠牲者を出したバタクラン劇場での追悼(営業再開)コンサートのライブ。
この場でフラジャイルが歌われたのは当然の流れと思うし、それ以上にふさわしい選択もないだろう。
ことによると この最終的手段は 暴力は何の解決にもならず 怒れる星の下に生まれた者たちには なす術がないという」という歌詞が現状にマッチして、哀情しか感じない。

こちらはIMAXシアターの映画『The Living Sea』のエンディングに使われたフラジャイル。
映像と歌詞がマッチしてないように思うが、「人というものが どれほど脆い存在か」とあるように、すべての生物は儚く、か弱い。特に人間以外のものは。

フリオ・イグレシアスが歌うと、崇高なフラジャイルの世界が、たちまち「金満エロおやじが若い娘を口説く時に歌うカラオケ」みたいなムードになっちゃうから、あら不思議。フリオは偉大なシンガーだと思うが、女性の目から見ると、バブルの匂いぷんぷんで、どうしても、どうしても、社員旅行の夜の部、ホテルのラウンジバーで、得意満々、カラオケのマイクを握りしめるおじちゃんのイメージがある。アレンジも、大阪ミナミのカラオケスナックっぽいし^^;
声も歌い方もエッチなんだよな。それを「セクシー」と取るか否かは、個人の趣味ということで。

StingのCD

ナッシング・ライク・ザ・サン
by (CD)
定価  ¥ 2,073
中古 24点 & 新品  ¥ 1,099 から
5つ星のうち 4.6  (6 件のカスタマーレビュー)

スティングのヒットアルバムは数あるけれど、結局、この一枚に勝るものはなし、というのが正直な感想。
近年、すっかり好々爺になってしまって、なんか禊ぎの世界になっちゃってるけども。
やっぱ、スティングは、いつも何かに飢えたような、ギラギラした頃が最高だった。
「オレより歌の上手い奴はいっぱいいる。でもオレのように歌える奴はいない」という、あのエゴエゴな雰囲気がたまらん魅力的だった。

人間、年をとると丸くなる。
だんだん仏に近づいて、最後は仏としてあの世に旅立って行く。

それは決して悪いことではないけれど、本当に人間としての魅力を感じるのは、やはり強烈な自我にのたうちまわっている時代だと、私は思う。

そういう意味で、「大人になってしまった人」というのはつまらん。

「悟りを開いた人」もしかりだ。

人間はもっと泥臭くていい。

それが許される限り、もっと我が侭でいいんだ。

……ということを。

スティングは教えてくれたような気がする。

ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・スティング&ポリス
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 (0 件のカスタマーレビュー)

   1977年、スティング、スチュアート・コープランド、アンディー・サマーズの3人組でデビューしたポリス。そのデビュー曲である「ロクサーヌ」をはじめ、日本語ヴァージョン(本作には未収録)も話題になった「DE DO DO DO , DE DA DA DA」、スティングのソロ名義である「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」、そしてパフダディーが亡き親友のトーリアスに贈るためにカバーした「見つめていたい」、もう勘弁してくれ! と言いたくなるくらい名曲ぞろいの最強ベスト。スティングの長いキャリアを振り返るのに最適なのはもちろん、いい曲は何年経っても色あせないということを立証してくれる1枚でもある。(多田ライコウ)

「スティング&ポリス」と銘打ってあるが、実質的にはTHE POLICEのベスト盤。
今ドキ、『THE POLICE』と言ってもピンと来ない若いリスナーをキャッチするために、このようなタイトルになったと思われる。
往年のファンはもちろん、ソロになってから好きになった人にもおすすめの一枚。

フィールズ・オブ・ゴールド~ベスト・オブ・スティング 1984-1994
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定価  ¥ 1,719
中古 19点 & 新品  ¥ 1,215 から
5つ星のうち 5.0  (4 件のカスタマーレビュー)

こちらはソロになってからのスティングのヒット曲を集めたベスト盤。
このラインナップは確かに美味しいが、やはり、本物の良さは、すべてのアルバムを通して聴かないと分からないと思う。

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